学校改革のカギ~教職員の「パラダイム」を変えることにある~「フランクリン・コヴィー・エデュケーション」高橋 広光 氏より

「おまえと呼ばない」

都内のある公立小学校に訪問した際、職員室の廊下の壁に大きな字で「おまえと呼ばない」と紙が貼ってあるのを見つけました。意味が分からず、気になりつつも、そのまま通り過ぎ、授業公開の会場へ。

授業担当はスポーツマンタイプの若手の先生。授業中児童一人ひとりに発言を求める度に○○さん、△△さん、と男子も女子も「さん付け」で呼んでいました。内心、「今日は授業公開だから、普段と違う丁寧さを装っているのか、不慣れで児童との距離感を測れず、よそよそしい関係性のままなのか」など勝手に想像していました。しかし授業そのものはよく準備されて、構成がしっかり組み立てられており、児童の発言も多く、活発に参加して楽しい授業でありました。私が注目したのは休み時間のクラスの雰囲気でした。児童たちは皆その先生が大好きで、先生の周り集まり、和気あいあいと楽しそうに話していました。先生が号令をかけると、皆一斉に動いて、クラスのまとまりがあることも感じられました。

時として私たちは関係性の近さを演出するために相手を呼び捨てにしたり、あだ名で読んだり、「おまえ」と呼んだりします。それが必ずしも悪いとは思いません。しかし、逆もありで相手を見下したり、否定したり、非難したりする時に、威圧的にそう呼んだりもします。

聞くとこの学校は数年前まで児童の中に問題行動が多く、先生方も連日その対応に追われ、「悪さ」をした児童を怒鳴りつけている光景が日常茶飯事だったとのことでした。その地域では子どもの教育には無関心な保護者が多く、学校の中もよく言えば「自由」悪く言えば「やりたい放題」という雰囲気で、当然ながら、教員達もその様な日々の中でかなり疲弊していたようです。

「おまえと呼ばない」の意味が分かってきました。どのように学校改革を進めたらよいのか、何から着手したらよいのか、どうしたら教職員たちの努力が成果に結びつくのか、思案していた校長は、コンビニで売っていた『まんがでわかる7つの習慣』に興味を持ち「リーダー・イン・ミー」 の取り組みを始めることにしました。その中で教職員皆で掲げたのが、まず「おまえと呼ばない」だったのですね。

パラダムシフトの力

私たちは、とかく人に対して先入観でレッテル貼りをしてしまいがちです。そのうち当の本人も周りが見ている目で自分を規定してしまい、その価値も可能性も制限してしまうことが有ります。『7つの習慣』の中で、著者であるスティーブン・R・コヴィー博士は「パラダイム」こそが大事であることを語っています。パラダイムとは、ものの見方、捉え方をいいます。子どもたちにどんな態度で接するか、「どうせおまえがやったんだろう…」「どうせあいつらは…」というパラダイムで子どもたちを見ている限り、建設的な関係性は築けないでしょう。子どもといえども、一人ひとりの人格を尊重する、可能性を信じるというパラダイムに変えることから学校改革に取り組んだこの学校を訪れるたびに、「かつてこの学校は…」というエピソードが、私には全く別の学校の話の様に聞こえています。

「生活の中で比較的小さな変化を起こしたいのであれば、私たちの態度や行動に対し適切にフォーカスすれば良いだろう。しかし大きな変化、劇的な変化を望むのなら、土台となるパラダイムを変えなくてはならない。」 

『完訳7つの習慣』スティーブン・R・ コヴィー

 

 <Profile>

フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社  エデュケーションチーム   高橋広光  氏

1967年青森県生まれ。大学卒業後は高等学校や大学など、教育機関を主な対象とした企画営業の仕事を20数年。高校生の進路指導の現場にも立ち会い、教職員の抱える様々な課題を外部から垣間見てきた。2018年より現職。