「人間関係には無理がある!」と割り切れば、保護者対応も楽しくなる?!~前田康裕先生へのインタビュー 第3弾~

人間関係には無理がある!

  <Profile>

熊本大学教職大学院 准教授
前田 康裕 氏

1962年、熊本生まれ。熊本大学教育学部美術科卒業。岐阜大学教育学部大学院教育学研究科修了。
公立中学校教諭、熊本大学教育学部附属小学校教諭、熊本市教育センター指導主事、熊本市向山小学校教頭を経て、2017年より熊本大学教職大学院准教授。『まんがで知る 教師の学び2』(さくら社)他著書多数。

児童・生徒がいれば当然、保護者がいます。今回は教師に欠かせない「保護者との関わり方」について前田先生からお話を伺いました。

保護者対応は「傾聴」がカギ

Meg
教師にとって保護者の対応も仕事の1つと言えますよね。
何か保護者対応で心がけていたことはございますか?
前田先生
一言で言って保護者によるので。
これが「絶対大丈夫」というのはないですね。
保護者の価値観がまるで違っていると話にならないので、やっぱり「聴く」ことは基本ですね。
「傾聴」は大前提です。
Meg
やはり「聴く」ことがカギなんですね。
前田先生
クレームの場合はよく聴いていました。
一番聴いていたのは教頭時代です。
本当に毎日のようにクレームを聴いていました。

ずっと聴くことは大事にしていましたよ。
その時に、しっかりうなずいて聴いて、「でも」とか「しかし」といった反論は言わない。
基本的に「なるほど」といった感じでうなずいて聴いていると8割がたはOKでした。
粘り強く聴いていましたね。

レジリエンスが大事

Meg
担任の場合だと自分自身へのクレームなので、かなり傷つきますよね。
傷つきますよね。
前田先生
管理職の場合は、学級担任などの別の人に対するクレームなので第三者的に聞くことが出来るんですよ。
しかし、担任の場合は直接言われるから、傷つくんですよね。
「ぐさーっ!」とくる。
「先生はどういうつもりなんですかー!」と言われると「ぐさぐさぐさーっ」とくるじゃないですか。
Meg
そうなんですよ。
もう苦しくなります。
前田先生
そう、それが結構効いて、心の病になったりすることもあるんですね。
以前私も傷ついていました。

でも今だから言えることなんですけれど、結局傷ついたことに対して、跳ね返していく力、それをレジリエンス※といって、その傷ついた心を自分で回復させていくっていう力も必要だと思います。

Meg
レジリエンスというのですね。
前田先生
はい。今はきついけれど、あと何日か経てば、何年か経てば、それは自分の力になって跳ね返ってくる。
いい事としてね。

そういう風に思い直した方がいいと思いますよ。
「傷ついて当たり前なんだ」と。
人間関係なんてそんなにうまくいくはずがない。
必ず人間関係には、無理があるんです。

色々な考え方を持っている人達と一緒に生活したり仕事したりするわけですから。
例えば、価値観が違うと根本が違うじゃないですか。目指すところも。

そうすると平行線になることもあると思うんですよ。
その時に、そこで落ち込むんじゃなくて、こういう事もあるのかと、ある意味割り切っていくことも大事なんです。

Meg
「傷ついて当たり前なんだ」「人間関係には無理がある」と思っていると、だいぶ楽になります。
前田先生
そこなんですよ。
私の著書「まんがで知る 教師の学び2」に、校内研修で傷ついた女性の先生が、主人公の吉良先生に
「教師によって教育観は異なります。」
っていうシーンがあるんです。
そして、続けて
「教師が一緒になって取り組むことって、どこかに無理がありませんか?」
っていうことをバーンと突きつけるシーンがあるんです。

すると、吉良先生がケロッとした顔で
「ありますよ、無理は」
と答えるんです。
無理はあって当たり前なんです。
人間なんだから。
ある程度割り切るしかない。
傷つくのが前提で話をしていった方がいいと思います、僕は。

色々な人と出会いながら成長していく

Meg
割り切って関係を作っていけば、傷つくことが分かっていれば、対応の仕方や接し方も変わる気がします。
前田先生
そう、それが大前提。
それと一人で抱え込まない方がいい。
様々な人、管理職はもちろんですけれども、親しい友人やあるいは学校の中では特に話がしやすい先輩などにちょっと相談してみる。
そうやってやっていくしかないと思いますけどね。

逆に保護者と心が通じ合えば、生涯の、何ていうかな、仲間のような友達のような存在になりますよ。

Meg
同僚に限らず、保護者が子ども達を共に育てる仲間のような存在になってくれたら、とても心強いですね!
前田先生
私は今から30年前、熊本の山間部の小学校に勤めていた経験があるんです。
昨日は、そこの小学校の校内研修に呼ばれたんです。
そこで、事前に当時の子ども達に私が行くことを知らせておいたんです。
30年前の子どもですから、もう40歳になっているんですけどね。

行くから夕食でも食べようかと話をしていたんです。
そこで行ってみたら、子どもだけでなく保護者もきてるんですよ。
結構な人数が集まっていて感激しました。
本当は2時間くらいで帰る予定だったんですけど、3時間もいました。
心が通じ合えば、そういうことにもなるんですよ。
本当にありがたいです。

Meg
素敵ですね~。30年もの時を超えて、教師になって良かったと再び思える瞬間ですね。
前田先生
だから教育って長い目で見た方がいいんじゃないかな。
学級経営がうまくいかないことなんて山ほどありましたし、6年生の女子なんて反抗してきて本当に大変だったんです。
私と目を合わせないっていう状況になった時もあったんです。
とにかく、女の子が言う事を聞かない時があって。

それから、何年か経って、言うことを聞かなかった女の子達が大人になって同窓会を開いてくれたんですよ。
すると、彼女たちが次々と
「先生あの頃はすみませんでした」
「反抗期ですみませんでした」
と言ってくるんです。

そういうのを聞いて、安心しました。
それからは、「焦らない」というか「急がない」で、ゆったりとした考えでもいいんじゃないかなと思うようになりました。

いろいろな先生と出会いながら、いろいろな友人と出会いながら人は育っていく。
そう最近は思っています。

まとめ

今の時代、人間関係に悩む人が多くいます。その中で悩むことも大事ですが、根底に「人間関係には無理がある」と思うと、最初から構えずに力を抜いて対応することが出来るのかもしれません。そうすることで、結果的にスムーズにいく場合も多いのではないでしょうか。根底の考え方を変えてみると、思いもよらない結果が生まれるかもしれません。

(第4弾へ続きます。)

【参照】

※レジリエンス(Resilience)
「困難に立ち向かう力」「困難を跳ね返すだけの力を身につけながら成長していく力(まんがで知る 教師の学び より抜粋)」
こちらを参考にしてください→仲間とともに、困難を乗り越える力をつけていく

■ 執筆者情報
meg【元小学校教師】
子どもが好きで、彼らをより笑顔にしたいという思いを抱き、教員を目指す。しかし、挫折。あまりにも上手くいかないことばかりで退職を考えるも、奮闘し、次第に毎日が楽しく変化する。子ども達からも「先生大好き!」と言われる日々を送る。そんな小学校教員時代の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。現在は海外に移住し、子ども達に日本語を教えたり、日本の文化を伝えたりする活動を行っている。また現地校で日本の教育との違いを学び、それを日本の教育に活かす方法や感じたことを日々発信している。