「教育改革」や「教育指導要領」について考える
<Profile>
熊本大学教職大学院 准教授
前田 康裕 氏1962年、熊本生まれ。熊本大学教育学部美術科卒業。岐阜大学教育学部大学院教育学研究科修了。
公立中学校教諭、熊本大学教育学部附属小学校教諭、熊本市教育センター指導主事、熊本市向山小学校教頭を経て、2017年より熊本大学教職大学院准教授。『まんがで知る 教師の学び』(さくら社)他著書多数。
「まんがで知る 未来の学び」の本の帯に書かれている「教育改革とは?」の意味はどういう意味なのでしょうか。またそれは社会と関係しているのでしょうか。


「アクティブ・ラーニング」が、1人歩きしてしまった感じですよね。

僕にとって、そこは懸念材料としてあったんです。
だから、もっと「これからの社会を考えていこう」という部分を強調したかった。
これは子ども達だけではなく、もちろん学校の先生自身もそう。
そして日本人全ても、もしかしたら日本人以外の全ての人にとっても持続可能な社会を創っていこうということなんだろうな、と思うんです。
それがその本の帯に「教育改革とは何か?」っていう言葉で編集者の方が出してくれたということなんですよね。

学校の先生の中でも温度差があると思います。
それなのに、一般の方からしたら「教育改革」や「教育課程」って言葉自体は知っていても中身はよく分からないですよね。

小学校を舞台にした方がいいというのは分かっているんですけど。
というのは、教育書の需要からすると小学校の先生の方が数も多いし、色々な教科を教えなくてはならないので多く読むからです。
でもあえて中学校にしたのは、中学校の先生は教科ごとに分かれていますよね。
「教育課程」全体がこういう動きになっているというのは意外と分かりにくい、というところがありましてね。


もう1つは中学校の先生は本当に忙しくて。
部活動、生徒指導、それに保護者対応もあって、本当に大変なんですよ。中学校の先生を見てるとね。
自分自身も中学校の経験がありますし。
そんな「中学校の先生を応援したい!」という気持ちと、やはり「その現状を多くの人に知ってもらいたい。」という気持ちがあって、中学校に設定したんです。

土日も部活で休みなしで働いていますよね。






病気になる人も後を絶たないとか。

ただ、教育のすごく大事な部分だけは「きちんと責任持ちます。」としていればいいんですよ。
でも学校という場は、例えば運動好きな子ども達がしっかり運動ができる場になればいいなと思っています。
運動に限らず音楽や美術など、色々なことに興味を持っている子達はそれなりに自分の活躍する場があって、それは必ずしも先生たちが請け負わなくてもいい。
学校は場を提供して、いろんな大人が入ってきてもいいと思うんです。



やはり今、塾に行く子、習い事に行く子など経済的に豊かな家庭の子はいいんです。
でも子ども達全員が…と考えると、学校がそういう場になって、きっかけを与えるというは大事ですよね。
でも、それを全て先生が出来るかっていうと…それは厳しいです。
というか、無理です。先生も人間なので。

学校という建物はあって、昼間は子ども達が学びにきて、夜は大人が学びに来る。
生涯学習社会のことを考えると、大人もたくさん学んだ方がいいと思っているんですよ。

今は全部がそこに凝縮されてしまっていて、しかも地域の人も入れない。
まだまだ学校は閉鎖的だというイメージがあります。

もっとスポーツをふつうに楽しんでもいいんじゃないかと。

もっと楽しんでもいいですよね。



本当に真剣にやりたい子たちは別にクラブチーム等に入ればいいんです。
色々な意味で、教科の学習だけじゃなく、さまざまなことが学べる。学校がそういう学び合いの場になってくるといいなと思ってるんですよ。




まとめ
「学校は場を提供して、色々な大人が入ってきてもいい」という前田先生。そして、大人ももっと学んだ方がいいという言葉に、とても共感しました。本来の学校とは、学ぶ場。そういったことをふまえ、これからどんどん学校の在り方が変化してくると思われます。先生が1人で抱え込むのではなく、地域社会の人々がどんどん参入し、みんなで子どもを育て、また自分達も成長していく。これから高齢化をむかえる日本だからこそ、その教育の根本のあり方を世界に示していくきっかけに、学校がなっていくのではないでしょうか。
(第2弾へ続きます。)→http://kyouikukaikaku-2020.com/2019/04/09/11/
森田恵【元小学校教師】
子どもが好きで、彼らをより笑顔にしたいという思いを抱き、教員を目指す。しかし、挫折。あまりにも上手くいかないことばかりで退職を考えるも、奮闘し、次第に毎日が楽しく変化する。子ども達からも「先生大好き!」と言われる日々を送る。そんな小学校教員時代の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。現在は海外に移住し、子ども達に日本語を教えたり、日本の文化を伝えたりする活動を行っている。また現地校で日本の教育との違いを学び、それを日本の教育に活かす方法や感じたことを日々発信している。
「学習指導要領」や「中央教育審議会」の答申は、「社会に開かれた教育課程」ということを重視しています。
社会がどんどん変化していますよね。
その社会にきちんと対応できるような、その新しい社会に対応できるような、そういった人たちを育てていこうという考え方なんです。
本来はそれが一番中心にくるんですよ。
でも日本の場合は、「アクティブ・ラーニング」という言葉が先にボーンと中に入ってきてしまった。
ですから、「社会に開かれた教育課程」という新しい社会に対応した資質や能力を育てていこうという、その一番大きな目標がかすんでしまったんですね。
「アクティブ・ラーニング」の方ばかりに行ってしまって。