学びに目的を!~前田康裕先生へのインタビュー vo.2 第3弾~

これからの時代、「子ども達の学び」はどう変化していくのか。

 <Profile>

熊本大学教職大学院 准教授
前田 康裕 氏

1962年、熊本生まれ。熊本大学教育学部美術科卒業。岐阜大学教育学部大学院教育学研究科修了。
公立中学校教諭、熊本大学教育学部附属小学校教諭、熊本市教育センター指導主事、熊本市向山小学校教頭を経て、2017年より熊本大学教職大学院准教授。『まんがで知る 教師の学び』(さくら社)他著書多数。

教師が頭に入れておきたい、「学びの連続」。それはとても大事なこと。

前田先生
はっきりしてるのは、決められた答えをできるだけ速く、効率よく解いていくという学習はあまり重視されなくなってくるでしょうね。
僕が子どもの時はまさにそのような感じでしたけど。

とにかく、テストの解答用紙の枠の中に正しい答えを書き入れていったりとか、できるだけたくさん問題が解けたりすることがいい事だってというのが重視された時代がありました。

それ自体は悪くないんです。
でもこれからは、答えがない問題を知恵を出しながらみんなで考えていくというような学習が増えていくと思います。

私の漫画『まんがで知る未来への学び』の中で、中学生がポスターを描く上で大事なことは何なのかということを話し合うシーンがあるんです。
あれって別に答えはないんですよね。
色々な考え方があるのは当然なんです。
それをみんなで集めてきた資料やアイデアを出し合いながら、「これはこうだよね?」って言葉にしていく。

その活動によって子ども達が情報を発信する側になっていくんです。
「私はこう思う。」とか「ぼくはこう思う。」と意見を交換していく。
それをまとめていくと、1つの知見になっていく。

その知見をもとにして、次はポスターの材料になるものを探していこうとなりますよね。

結局、学びが連続しているんですよ。
ある1つの答えをだして、それで「終わり」じゃないんです。
学習者の中には、「この町をよくしていこう」「PRしていこう」という学習の目的がちゃんとある。

そのためにポスターの大事なことを調べたり、その町のよさを取材したり。
2巻ではそれをみんなで編集してPRしていくんですけどね。
それは自分達が作ったポスターが、ほんのわずかでも人を動かしていくということなんです。

自分達が作ったポスターで社会がちょっと動き出す。
そこに子どもたちが学ぶ意味とか、自分の役割を感じていくんです。

喜びも生まれますよね。
やりがいも。
ただやるだけじゃなく、誰かのためにとか、人の役になるっていうのは。
それが自分のやったことで社会に少しでも変化が生まれたら。
誰かの目に触れるだけでも、子ども達にとって感動も違うものになりますよね。

前田先生
だから学びに目的があると、学びも楽しくなるし、やりがいもありますよね。
それが社会に直結していれば、余計そうだと思いますね。
そういうカリキュラムや、そういう学習の設計が求められると思うんです。

私の漫画の中に桜山先生という本当に真面目な女性の先生が登場します。
その先生は今までやっていた通りに、「環境のポスターを作っていきましょう。」と子どもたちに指導していく。
なぜ環境のポスターを作るのか、何も考えずにやっていたんです。

考えないですよね。考える余裕がないというか。
前田先生
コンクールがあるからって毎年やってたんです。そんな時、大学院生の黒髪森炎くんが桜山先生にその意味を聞くことによって気づいていきます。
そういった意味では、「学び」というのは社会の中の何かを動かしていくような、役割とか意味とかそういったものを見つけるものになっていくのだろうと思います。

それが大きな1つです。
もう1つは今、日本の学習指導要領の中は学ぶことが多くて。
正直、頭の中に入らないんじゃないかなと思うんです。

たしかに。知識を入れるだけで精一杯ですよね。
前田先生
そう考えると、別に全部覚えなくてもいいわけで。
例えば、音楽にしても、体育にしても、図工にしてもそうですけど。

ある程度やる必要があるんですが、それ以上は得意な子がどんどんやっていけばいいのかな、と。
だからプログラミングがすごく好きな子は、午後はもうずっとプログラミングをやっていてもいいというようにすればいいんです。
スポーツが得意な子はずっとスポーツやってていい。
これからどんどん個に応じた学習が増えるんじゃないかと思います。
その子のよさを生かすような学習になっていくのだと。

そういった意味では、例えばもっとテクノロジーが入ってきた時に、大きく変化すると思います。
たとえば、今の学校教育は、日本の3年生すべてが3年生として決められた学習内容をやってるじゃないですか。

そうですね。
前田先生
そうじゃなくて、その子があんまりうまくできてなかったら2年生に戻ったりとか。
あってもいいですよね。海外では普通です。恥ずかしいことでもないですし。
前田先生
逆に5年生、6年生にいっちゃったりとか。
特に積み上げが必要な算数とか英語といった教育は、そういうその個に応じた学習になっていくんじゃないかなっていう気がしますよね。
大きくプロジェクト学習と、もう1つ、その個に応じた学習になっていくだろうっていう気がします。
熊本大学の苫野一徳先生も同じことを言っていますけど、もうそうならざるをえないのではないでしょうか。

テクノロジーの発達によって、同じ学年の同じ子たちが同じような内容を一斉にっていうのはやっぱり無理が来てるなと思えてなりません。

でも実際にそうやって変わっていくのでしょうか?
前田先生
ああ、変わっていくと思いますよ。
たぶん、そういう流れにならざるを得ないと思います。
恐らく次の学習指導要領は相当変わると思います。
そうですか。
前田先生
10年後は。
10年後ですね。
そうなった時に、今度は先生たちが対応できなくなるんじゃないでしょうか。
やはり先生たちは今まで通り、従来のやり方から抜け出せない気がするんですが。
前田先生
うーん、難しいところですよね。
だから教員養成とか、研修も変わっていかないといけないですよね。
そうですよね。研修自体もどんどん変わっていかないといけないですよね。
教員の環境も変えていかないといけないですよね。
前田先生
学校の中にもっといろんな大人が入ってきていいと思っていて。
それは、今の高齢者を生かすことにもなると思うんです。
高齢者の人がたくさん増えてくるってことは、要するにまだ元気のいい働くことが可能な人が増えてくるということです。
その人たちが新たな若い人を教える存在にもなるし、自分達が学ぶ存在にもなるんですよね。
そういう人たちが学校の中にたくさん入ってくれるような仕組みができてくるといいなと思いますよね。
ではこの10年間。ある意味、凄く変化の大きな時期ですよね。
前田先生
色んな意味で社会の変化も、もちろん学校の変化もそうでしょうね。
まず先生たちが学ぶ楽しさを知るのが先ですね。

まとめ

社会の変化とともに、変わっていかないといけないのは、教師。それによって、子どもの学びも変化していきます。教師はどう変化していけばいいのか。まずは自身が学ぶ楽しさを再発見していくことが大事なポイントになります。
大きな変化をむかえる中、人として地域や高齢者の方と力を合わせて共に成長していく。そういった意識が教師にも必要になってくるのではないでしょうか。

(第4弾へ続きます。)

■ 執筆者情報
森田恵【元小学校教師】
子どもが好きで、彼らをより笑顔にしたいという思いを抱き、教員を目指す。しかし、挫折。あまりにも上手くいかないことばかりで退職を考えるも、奮闘し、次第に毎日が楽しく変化する。子ども達からも「先生大好き!」と言われる日々を送る。そんな小学校教員時代の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。現在は海外に移住し、子ども達に日本語を教えたり、日本の文化を伝えたりする活動を行っている。また現地校で日本の教育との違いを学び、それを日本の教育に活かす方法や感じたことを日々発信している。