人とのつながりによって、人は成長する。~前田康裕先生へのインタビュー vol.2 第5弾~

物語の終わり方にも意味があった…?!

 <Profile>

熊本大学教職大学院 准教授
前田 康裕 氏

1962年、熊本生まれ。熊本大学教育学部美術科卒業。岐阜大学教育学部大学院教育学研究科修了。
公立中学校教諭、熊本大学教育学部附属小学校教諭、熊本市教育センター指導主事、熊本市向山小学校教頭を経て、2017年より熊本大学教職大学院准教授。『まんがで知る 教師の学び』(さくら社)他著書多数。

今後の物語の展開はどうなっていくのでしょうか?

やはり今後の展開は読者の想像に任せるといった形でしょうか。
前田先生
そうですね。ただひとつ言えるのは、この子たちは問題意識が高まっているんですよね。
そうですね、凄い高まってますよね。
前田先生
今まであまり気にしてなかったけど、町が壊れ始めている。
それを見て、まだモヤモヤとした問題意識が残っている状態で、今度は先生たちが変わってくるんです。
桜山先生はだいぶ意識が変わってきてますよね。

竜南先生はまだどうしたらいいのか分からない状態の中で、新しい授業ができないで、竜南先生もまた「自分はこのままでいいんだろうか?」と悩む。

「森炎くん」は探求型の学習、問いを立てて自分で学習するという学習にすごく興味を持ったので、「総合的な学習を研究課題にしたい。」と言うんです。
そうしたら、周りの先生たちが「いやいや、うちの学校の総合的な学習はうまくいってないから、やめたほうがいいよ。」と言い始めたんです。
それで、あることがきっかけになって、今度は先生たちがプロジェクトの学習を体験することになっていく。

先生たちが学び始めるんですね。
前田先生
はい。それでプロジェクトの学習の中で、先生たちが探究的な学びを体験していくわけです。
一方、地域の住民の中ではいろいろなトラブルが起きてしまいます。

そして、どうしようもできないところになって、本屋さんに、ある人が訪れる。
そういう展開なんですよね。
そのある人が登場することによって、すこしずつまた変わっていく。
人が登場することによって、何か少しずつ変わっていく。

でも本来そうですよね。
人と関わっていくことで、自分の人生が変わっていく。
前田先生
そうなんですよ。
だから今回意識したのは、今までどちらかというとビジネス漫画は、通常だいたい若い女性が登場して、いろいろなトラブルを起こして、そんな時にちょっと年配の男性が登場して、上手く解決してくれるみたいな展開が多いですよね。
そうですね。
前田先生
それはそれで非常にわかりやすいんです。
とっても。誰がどういうことを言ってるかというのがはっきりする。
でもどうしてもリアリティがないような気がして。
たしかに漫画の中、本の中の出来事といった感じがしてしまいがちですよね。
前田先生
実際はお互いに相互に影響を与え合ったり、ある人の登場によってまた新しいことが分かったりするものですよね。
今回はお互いにそれぞれ影響しあいながらみんなが成長していくという話にしたかったんです。
それはすごく分かります。
誰か主人公を中心に話が進んでくという訳じゃなく、みんながみんなで影響を与え合っている。それは良くも悪くも。
前田先生
良くも悪くもです。その通り。
でも実際の社会はそうじゃないですか。
いいことばっかりじゃないし、良い人ばっかりじゃない。
前田先生
そうなんですよ。
頑固爺さんがいたりするんですよ。
それで、どっちが悪いってわけじゃないんです。
だからこそ、この漫画はリアリティがあるし、現実味がある。
前田先生
結局みんな活躍したいって気持ちはあるんです。
みんな思いは一緒なのに、ズレていって今があるという状態ですよね。
前田先生
そうなんですよ。
3人のおばちゃんもそれぞれ人生があって。
印手(いんて)さんは、元中学校の理科の先生なんです。
もともと県で雇われていたので、県内のいろんな町を回って、今は故郷の町に帰ってきてるって設定なんです。
だからその町の自然をすごく愛してる人なんです。
それで、昆虫の写真を撮ったりしてる。

阿亜斗(アート)さんという人はモノづくりがすごく好きな人で。
ちょっといいところのお嫁さんなので。
物を作ったり、手芸が得意だったりするんです。

前田先生
1番ガサツな粒屋木(つぶやき)さんって人は
生活はそんなに派手じゃないんです。

昔、食品工場で働いていた経験があったんですね。
その時に女性同士が仲が悪かったことがあったんです。その時に年配の女性が登場して、誰かが花をもってきて飾ってくれたら、掲示板にその感謝の気持ちを書いてくれたりとかしてくれる人がいたんです。
水が出しっぱなしになってたり、ちょっと汚れてたりした時に、そういうこともみんなに伝えてあげたり。

いい時にはすごくその人を褒めるし、ダメな時は全体に「こうしましょう。」と言える。
穏やかな人なんだけど、職場の雰囲気をドンドン変えていったっていう人の話が出てくるんです。
粒屋木さんは、その年配の女性に大きな影響を受けたんです。
だから、粒屋木さんは、基本的には人の批判はしないんです。
社会的な風潮とか、仕組みとかそれに対しての批判はするけど、「だからこうしましょうよ。」という提案をしていく。
それでどんどんフォロアーが増えていくという人なんですよ。

それぞれおばちゃんたちも、人生経験の中で自分のいいところを生かしていく。それが結果的にはまた社会を変えていく働きになっていく。

それぞれの学習者が、それぞれのいいところを活かしていくことによって、大きく変わる可能性がある。

それこそ教師だけじゃなくって、地域のおじいちゃんやおばあちゃんでも、「私なんて」「私には何もない」と思っていた人でも、自分にもできるんだって思えるきっかけになりそうですね。
そういう人にも読んでもらいたいです。
前田先生
そうですね。
それと、あの本の中には、あるモノがひんぱんに登場しています。
あまりにも当たり前すぎて、その町の人は気づいていなかったこと。
それがある人が登場することによって、「えっ、そうなんだ」って気づいてくる。
そういうのはありますよね。
自分のことは自分が一番分からないんですよね。
前田先生
そう。だから本人たちは気づいてない。
それをまた、みんなが情報を発信することによって、人がつながっていって新しい価値が生まれていくという話にしたかったんです。

そんな感じだから、テーマが盛り込み過ぎてしまって。
だから1巻じゃ終わらなかったんです。
どうしても3巻くらい必要なんですよね。。。

そうですよね。
絶対無理ですね。
前田先生
2巻はプロジェクトの学習と、地域の中で何を求めなくちゃいけないか。
そういう展開になっていくと思うんです。
プロジェクトの学習が話の中心になってくると思います。
それじゃあ、どう考えても、3巻までは続きますね。
前田先生
続きますね。
あんまり売れないかなと思うんですけど、自分にしか書けない本じゃないかなって思ってるんです。
そうですね。
今までなかった本なので。
前田先生
ビジネス漫画とはちょっと違いますよね。
また教育書とも違いますし。
前田先生
今回もいろんな人に、学校の教師以外の人にも読んでほしいですね。
そういうメッセージを受け取ってほしいですね、学校の先生以外にも。
自分では気づいてないかもしれないけど、良いものがあるんだよっていう。
多くの読者に受けとってもらえたら嬉しいですね。
前田先生
そうですね。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
前田先生
こちらこそ、ありがとうございました。

まとめ

今回は、とても貴重なお話をきくことができました。やはり鍵となるのは「人」。人とのつながりや、相互の関係によってしか、人は成長できないということ。反対に言えば、人と関わっていくことで、どんどん成長が加速していくということ。そう思うと、学校という環境は自分次第でどんどん成長する場に変えていくことが出来るとも言えるのではないでしょうか。教師にとっては毎日、忙しい日々。でも心だけはなくさないように、子どものためだけではなく、自分のことも振り返る余裕を少しでも持ってみてはどうでしょうか。

■ 執筆者情報
森田恵【元小学校教師】
子どもが好きで、彼らをより笑顔にしたいという思いを抱き、教員を目指す。しかし、挫折。あまりにも上手くいかないことばかりで退職を考えるも、奮闘し、次第に毎日が楽しく変化する。子ども達からも「先生大好き!」と言われる日々を送る。そんな小学校教員時代の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。現在は海外に移住し、子ども達に日本語を教えたり、日本の文化を伝えたりする活動を行っている。また現地校で日本の教育との違いを学び、それを日本の教育に活かす方法や感じたことを日々発信している。