「苦手な子がいる」と思うあなたへ──その奥にいた“小さな自分”と出会って

【更新日】 2025年7月12日(土) コミュニケション・外国語運用能


「苦手な子がいる」と感じるあなたへ──その奥にいた“小さな自分”と出会って


「教員である以上、子どもは平等に接するべき」

そう頭では分かっていても、「どうしても好きになれない子」がいる。
そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

それに気づいたとき、私自身、
とても強い“自責の念”に襲われました。

「教員として失格なんじゃないか」
「子どもに失礼じゃないか」
でも今、あのときとは違う感覚でこの経験を見つめています。

これは、“指導のスキル”の話ではなく、
「自分の感情」とどう付き合うかという、
もっと根源的な問いだったのだと。

今回は、そんな気づきから始まった私自身の振り返りをお届けします。



「どんな子にも平等に接する」
「子どもを全力で受け止める」

これは、教員として当たり前のこと。
私もずっと、そうあるべきだと思ってきました。

でも、ある子どもと関わっていたとき、
どうしても心がうまく向かっていかない感覚がありました。

いわゆる「苦手意識」というものです。
正直に言えば、「好きになれない」と感じていたのです。



その子は、よく家庭で学校の出来事を話す子でした。
そして、親御さんがすぐに学校に連絡をくださる。

毎日のように家庭訪問をし、1日3~4時間話し続けることもありました。

一生懸命でした。
必死でした。でも、正直しんどかった。

ふと、こんな気持ちが湧いてきたのです。
「毎日、正直つらい。」
「でも、これは私の責任だから、頑張らなきゃ。」

でも口に出せるはずもなく、
私はそれを“当たり前の努力”として自分に課し続けていました。



だけどそのことについて
最近、ふと気づいたことがあります。

あのとき私が感じていたのは、
その子どもへの苦手意識じゃなかったんです。
そのもっと奥に、別の感情があったのです。

それは——
「いいな、私もそんなふうに親に話して、受け止めてもらいたかったな」
という気持ちでした。



私自身は子どもの頃、
親にうまく気持ちを伝えられなかった。
心配されても、素直に「助けて」と言えなかった。

だからこそ、あの子の姿がまぶしくて、
それを見ていると、
自分の“言えなかった過去”がチクチクと疼いたのです。

「この子、苦手」だと思っていたけれど、
本当は「うらやましい」と思っていたのかもしれません。



教員として、そして母としても、
「子どもはどんな状態でも受け入れなきゃ」
「感情に左右されてはいけない」

そうやって“ちゃんとした大人”を演じることに
知らず知らず慣れていた自分がいました。

でも今は、少し違う視点で捉えています。



「受け入れる」って、
無理をして“いい人”を演じることじゃない。
大切なのは、
自分の感情すら否定しないことだと気づいたのです。

「今、私はこの子にイラッとしてる」
「この感じ、なんだろう。」

そんなふうに感情を見つめたとき、
そこには、小さな頃の“わたし”が隠れていました。

愛せないことすら、抱きしめていい。

昔はこの言葉、意味はわかるけれど
実感をともなってはいませんでした。

でも今は、ほんの少しだけ
「ただ感じていいんだ」と思えるようになった気がします。



苦手に感じる子がいたとしても、
それは“先生失格”ではありません。

その感情の奥には、
まだ癒えていない自分自身が眠っているだけかもしれません。

だからこそ、その感情に気づいてあげられることが、
ほんとうに子どもと出会い直す第一歩なのだと思います。

さらにそれに気づいてから、
子どもとの関わり方に変化が出てきました。

無意識に構えていたんです。
でも気づいたことで、心からその場を共に楽しめるようになったんです。




子どもと関わる教員、親は
ときにとても個人的で、深い感情と向き合わされます。

でも、それを恥じる必要はありません。
むしろそれは、
自分という存在と、もう一度出会うチャンスなのかもしれません。

「子どもと向き合うこと」は
「自分を育て直すこと」でもある——
今、そんな風に感じています。

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■ 執筆者情報■森田恵
子どもが好きで教員を目指すが、挫折。退職を考えるも奮闘し、次第に毎日が楽しく、子ども達からも「先生大好き!」と言われるように。そんな教員時代の経験をもとに、悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。結婚を機に、渡米。10年の小学校教師の経験を活かし、渡米後は日本語の家庭教師や、現地校にて日本の文化を伝え、日本語を教えて過ごす。現在3児のママ。2度の流産経験により、食や環境、ママの状態が子どもへ与える影響などに興味を持つ。さらに、意識によってもたらされる変化を日々、体感を通して実践している。