「こなす」ことが得意なだけでは、これからの時代は生きにくい…。
1.手順の説明
以下において、「GRIT~やり抜く力」の「バイアスが生む“4年と4万ドル”の差」の要約を行い、それについて批評します。
まず順を追って要約し、必要ならば補足します。
次に重要ポイントを1、2点絞ってピックアップし、それについて自分の視点からコメントし、批評していきます。
主張は論理的に行い、必要に応じて証拠をつけて説明し、最後に全体を要約して結論づけ、まとめていきます。
2.本節のまとめ
「バイアスが生む“4年と4万ドル”の差」
・言うことと、心の底で思っていることは、実際には異なっている。(「恋人の外見なんて気にしない」と言っておきながら、デートの相手を選ぶとなったら、「いい人」よりも「かっこいい人」を選んでしまうのと同じ。)
・天賦の才能に対するえこひいきは、私たちの中に潜んでいる偏見のひとつ。
努力によって成功した人のことも「生まれつきの才能」だと決めつけ、活躍している人を見ては、その才能に憧れる。
「なぜ“もっとも革新的な企業”が悲惨な末路を迎えたのか?」
・『ウォー・フォー・タレント』※では、能力の低い人材は容赦なく切り捨てるべきだと言う。熾烈な競争を勝ち抜いた者がことごとく優遇される環境を作ることで、能力の高い人材にとっては居心地をよくして引きとめるように仕向けたいため。
・マッキンゼーを徹底的に研究したジャーナリスト、ダブ・マクドナルドとマルコム・グラッドウェルは『ウォー・フォー・タレント』を批判。マッキンゼーの推奨どおりに人材を扱った実例として登場した企業は、同書の刊行後、いずれも業績が低迷。
理由として、従業員が信じがたいほどうぬぼれが強く、同時に、つねに「自分の能力を見せつけなければ」という強い不安と衝動に駆られる従業員が増え過ぎたため。短期間で結果を出すことを何よりも重視し、長期的な学習や成長を妨げる企業文化だったため。
3.疑問に思ったこと
“「誰よりも優秀だと証明してみろ」と従業員たちを煽り立てることで、ナルシストの温床ができあがり、信じがたいほどうぬぼれが強いと同時に、つねに「自分の能力を見せつけなければ」という強い不安と衝動に駆られる従業員が増え過ぎたのだ。”
この1文を重要ポイントとし、下記に疑問に思ったことを示します。
「上記の例は、人間を“優秀さ”という1つのはかりで測ることによって、企業全体としてダメージを与えた良い例と言えるのではないか。また、この“優秀”という定義を、能力に固執してしまったために業績が低迷したともいえるのではないか。」
4.学びをどう生かすか
著者が述べているように、まだまだ多くの人は、重要だと言っていることと、心の底で思っていることに違いがあります。
上記のピックアップした一文のように、優秀でないよりは、優秀でありたいと思ってしまう心の思いをより加速させた結果であるのではないでしょうか。
それは私たちが幼いころからくらべられ続けてきた結果でもあると思います。
もし、私たちが「優秀」という言葉をそこまで重要視していなければ、上記のようにたとえ会社側が「優秀だと証明してみろ」と言ったとしても、個々がさまざまな面で自分にできることで勝負し、違った方向へ進んでいたはずです。
それぞれの優秀の定義が、恐らく同じであるため、(ここでは会社の業績をあげる、誰よりも営業の能力がある等。)そこに固執し、企業の低迷となったのだと思います。
経団連による企業アンケートでは、新卒採用で「選考に重視した点」のトップは2017年まで15年連続で「コミュニケーション能力」です。
「主体性」や「チャレンジ精神」「協調性」より重視されているのです。
(朝日新聞デジタルより抜粋「2018年5月24日」)
また、「優秀」の定義とはどのようなものなのでしょうか。
非常に優れていること。また、そのさま。他のものより一段と勝っていること。
とあります。
企業で言えば、分かりやすいのがいかに業績をあげられたか、または下記のような記事もみられます。
メルカリ、全社員に株の報酬制度 優秀な人材を確保
(日本経済新聞より)
優秀な人材と言われる人達は多くの共通点があると言います。
・自分の役割を理解している。
・目標が明確である。
・物事に対して前向きである。
・相手の立場に合わせ、自分の考えを伝えられる。
・時間の切り替えができる。
・集中力がある。
・謙虚さを持ち、また自己肯定感の強さも持ち合わせている。
など他にもあるようですが、これだけを見ても、全てを持ち合わせている人は中々いません。
できることもあれば、苦手なこともあります。
それが人間であり、ともに働く仲間として、補いあい、フォローし合うことで全体の力をあげていくというのは果たして、きれいごとなのでしょうか。
プレジデントオンラインに「会社が絶対に手放さない、優秀人材6タイプ」とあります。
➀いつでも上司の代わりができるよう、自身のスキルを磨いている人
②企業に収益をもたらす人
③人材を育成できる人
④5年先、10年先の社会構造変化をふまえて、自分の仕事を高度化できる人
⑤営業経験を持ったプロフェッショナル
⑥できあがった企業ブランドに依存せず、逃げない人
ここから分かるように、著者の述べている例は、今までの学校教育、家庭環境に影響されているとも言えます。
正直、まともに学校教育をうけ、真面目に授業を受けてきた人が優秀かというとそうでもありません。
むしろ、闘争心があったり、人と違うことを好んでやっていたり、ちょっと変わっていると言われている人だったり…
そういった人材がこの先求められていると言えます。
学校の中で「いい子ちゃん」として生活してきてしまった人は、これからの社会にはなかなか「優秀」な人材としては認められにくいのかもしれません。
つまり、何事も「こなす」人間がいままでは良しとされてきたけれど、これから先はそれはAIが担ってくれます。
代わりに必要なのは、「こなす」ことが出来る人間ではなく、人と違った感性を持ってモノを作れる人間であったり、アイデアが重視されたり、何もないところから生み出せる創造力だったり、それこそ闘争心であったり。
私も含め、学校という場で言われたことを言われた通りにして生きてきた人間にとって、これから先は全く違う生き方をしていく必要があります。
それは優秀という言葉に惑わされず、自分ができることを探し、むしろ自分にしかできないことを見つけ、実践していくという方法です。
自分が誰かと比べて劣っている、優れているという判断は自らの能力を退化させていくのです。
まずは学校という場で、人と比較するということをやめていく。
そういう判断力を子ども達からなくしていく。
これは「競争をするな」ということではありません。
人それぞれ、持っている能力は違う。自分にできることを精一杯やり、伸ばしていくことが本来の教育だと思うのです。
5.まとめ
多くの人が今まで人と比べられて生きてきて、他人よりも優れていることがいいことだと思い込んでいることが、現状を創り出しているといえます。
本来なら、個々の能力は違います。
それを1つのものさしで測ることは不可能です。
今までが、とても不自然な時代だったといえるのではないでしょうか。
この先、だんだんと時代が変化してきています。
今、自身がなにが出来て、どのようなアプローチで社会に貢献できるのか。
また、教師であれば、子どもたち1人ひとり持っているものを活かせるような関わりをしていけるように心がけるだけでも、今までと違った対応ができるのではないでしょうか。
【参照】
※マッキンゼー
きわめて優秀な人材を採用し、高い報酬を与えていることで知られている。
「アメリカのビジネス界は何よりも才能を重視するカルチャーを想像すべきだ」という『ウォー・フォー・タレント』のアドバイスどおりのことを実践している。
※ウォー・フォー・タレント
論文名。
論旨:現代経済における企業の盛衰は、“Aクラス人材”を引きつけ、引きとめておけるかどうかにかかっているという。
■ 執筆者情報
meg【元小学校教師】
子どもが好きで、彼らをより笑顔にしたいという思いを抱き、教員を目指す。しかし、挫折。あまりにも上手くいかないことばかりで退職を考えるも、奮闘し、次第に毎日が楽しく、子ども達からも「先生大好き!」と言われる日々を送るようになる。そんな小学校教員時代の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。現在は海外に移住し、子ども達に日本語を教え、日本の文化を伝える活動を行っている。また現地校で日本の教育との違いを学び、それを日本の教育に活かす方法や感じたことを日々発信している。