担任として必要な「リーダーシップ」をどう身につけるか

担任として必要な「リーダーシップ」をどう身につけるか

『まんがで知る 教師の学び』
~深い学び 「EQリーダーシップ」からの学びを生かす


 

手順の説明


以下において、『まんがで知る 教師の学び2』の第5章「深い学び~EQリーダーシップ(感情を理解する力)」の要約を行い、それについて批評します。

まず順を追って要約し、必要ならば補足します。
次に重要ポイントを1、2点絞ってピックアップし、それについて自分の視点からコメントし、批評していきます。
主張は論理的に行い、必要に応じて証拠をつけて説明し、最後に全体を要約して結論づけ、まとめていきます。

本章のまとめ


・人間関係が上手く行かないのは他者に期待・依存し、それに気づかないで相手のせいにするから感情的に対立してしまう。だからこそ、感情のレベルに働きかける、すぐれたリーダーシップが必要。

・グラフィック・ファシリテーション(それぞれの考えを「見える化」して整理していくこと)をしていく等の「見方・考え方」を働かせることが、深い学び※につながっていく。

・メンバーの目的のためには、相手の考えや感情に思いめぐらせ、学級担任(学級のリーダー)は、自分の感情をコントロールする必要がある。(リーダーが、メンバーに対していらつくのは、EQ※が低い証拠。)

疑問に思うこと


下記の文をピックアップし、重要ポイントとします。
「いらついたり、ひどいと思ったりするのは、相手に期待しているからだ」
「相手に期待しているうちは自立しているとはいえない」
「すぐれたリーダーシップは感情に働きかけるものなんだ」

これをもとに問題提起をします。
「本書の中のEQという理論が提唱されて今もなお、人間関係に悩む人が後を絶たない。むしろ増えている。
ということは、これは知られていないという事なのか。
それとも、EQを高めたリーダーがいまだ不在だということなのだろうか。
または、この理論自体が実践しにくく、定着しにくいものなのだろうか。」

学びをどう生かすか


世の中には教師も含め、多くの人が人間関係で悩んでいます。
そんな人たちが本書の考え方を知り、他者依存していることを自覚し、「人間関係の管理」※が出来たら、人間関係はとてもスムーズに進んでいくはずです。

実際にEQという理論が広まり、多くの企業で研修されて、多くの成功者が生まれているといいます。
しかし学校という場ではなかなか浸透していないと言えるのではないでしょうか。

なぜそう言い切れるのかというと、学校において学級担任はおいておき、リーダーとして思いつくのは「学校長」です。
そして実際の学校において、「学校長」の存在はとても大きいのです。
不思議なことに学校長によってその学校の雰囲気や子どもたちの様子、学校全体のレベルなどが決まっているといっても過言ではありません。

学校長の任期は短い人で2年ほどです。
それでもその存在感は学校全体の雰囲気を左右するほど絶大です。

ということは、もし本書で書かれているEQを学校長が身につけ、リーダーシップを取っていけば、それだけでも学校という場が様変わりするのではないでしょうか。

しかし実際は、この理論を知らない人が多いのかもしれません。
または仮にこの理論自体を本、研修等で知り、頭に入っていても、実際に体験したり、行動に移していたりすることは少なかったり、身についていないという事も言えると思います。

学校長を例に挙げましたが、学級担任も同様です。
まずは小さなことでも体験したり、行動したり、実践することで、何かしら得るものはあります。

私が現役で教壇に立っていた時、まさに「EQが低い」状態でした。
もしその時に、このEQのことや人間関係がうまくいかない理由が他者依存であったり、自立していない自分に責任があることを知っていたら、全く違った対応を取ることができたかもしれません。

その頃は、いつも他人のせいにしていました。
だから感情的になり、対立も絶えませんでした。

しかし、そもそもこのEQとは何のことなのでしょうか。
EQだけでリーダーとしての能力が測定できてしまうものなのでしょうか。

「心の知能指数(EQ)は、心の知能(EI)を測定する指標である。
心の知能とは、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す。」
(ウィキペディアより)



つまり、このEQが高いと言われる人は「自分の感情をコントロールする知能」が高いとも言えます。
しかし、スティーブ・ジョブズ(アップル社の共同設立者の一人)の例を挙げてみます。
彼はとても有名であり、社会に大きく貢献しました。
彼の功績を見れば、EQが高いというのは納得できます。

「PRESIDENT Online」の記事にも、ジョブズについて、
「自分の完璧主義を押し通す彼の強靭なEQがなければimacもipodもiphoneもありえなかった」と書かれています。

でも彼の会社での様子、たとえばジョブズの要求する水準に満たない者に対しては、罵声を浴びせたり、その場でクビにしていたことが知られています。
もちろん、高い水準で仕事をしていたためだとも言えます。

しかし、彼の元で働く部下にとっては「EQが高いとは言えない。」と思う人もいたのではないでしょうか。

このEQは一つの方法として利用するのはいいと思います。
しかしこれ以外にも様々な要素によってリーダーが創られていくのではないのでしょうか。

ですから、このEQという理論を全て鵜呑みにはせず、まずは自分で試してみて活用できそうなら深めていくというスタンスがちょうど良いのです。
まずは知ることから。そしてとりあえず、一歩足を踏み出してみる。
自分にとって必要だと思えば、どんどん吸収していけばよいのです。

まとめ


世の中に情報があまりにも多く存在しています。
それを「知識」として留めておくのか、生かして活用するのか。
それを選択するのは個人の自由です。

しかしリーダーとして、子ども達の成長をより広げることを考えるのであれば、知識として知っていたり、何か一つでも吸収することは必要なことです。
今一度、リーダーとしてどうあるべきか、見直してみる機会にしてみてはいかがでしょうか。

【参照】


(ここには書いていないが、著者が述べていた言葉、関連のある言葉も掲載します。)
※EQ(Emotional Intelligence Quotient)
ダニエル・ゴールマン提唱
感情の知性(自分の感情をコントロールする知性)のことをEQと呼び、四つの領域を提唱。
「EQの高いリーダーのもとでは、人と人との相互作用が活発になり、チームは一つにまとまる」という。
・自己認識…自分自身の感情や価値観について深く理解している
・自己管理…自分の感情をしっかり管理すること
・社会認識…他者の気持ちや見方を把握し共感すること
・人間関係の管理…自分の本心から行動する誠実さを示し、他者と協調すること

※協同の精神
「仲間と学び合い教え合うことによって、学びは深まる」という考え方。
皆が理解し、実践できているかどうかを常に確かめていくことが大切。

※プロジェクト学習
課題解決学習のように教育的に意味のある活動を学習者自身が企画・実行し、その過程において必要な知識・技能の獲得を図る方法。
遂行過程は①目的設定②計画③実行④結果の判断となる。

※深い学び
『審議のまとめ』より
「各教科等で習得した概念や考え方を活用した「見方・考え方」を働かせ、問いを見いだして解決したり、自己の考えを形成し表したり、思いを基に構想、創造したりすることに向かう」こと。

※資質・能力
『審議のまとめ』より
資質・能力の一つに「学びに向かう力・人間性」がある。
「1人1人が幸福な人生を自ら創り出していくためには、情意面や態度について、自己の感情や行動を統制する力や、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等を育むことが求められる」と述べられている。


■ 執筆者情報
meg【元小学校教師】
小学校教員の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。