先生なら、親なら、
「子どもと信頼関係を結んでいたい。」そう思うのは当たり前ですよね。
でも実際は、
「信頼してもらえなくてどうしたらいいのか分からない。」
「あんなことをしてしまったから、もう信頼関係を取り戻すのは難しいと思っている。」という人もいるのではないでしょうか?
または、
「信頼しあっていると思ったら、相手はこちらのことを信頼していなかった。」
なんてケースも少なくないようです。
信頼関係がなかったらどうなるの?
1.こちらの伝えたい想い、伝えたいことが思うように伝わらない。相手の言葉に耳を傾けない。信頼されていないのだし、信頼していなければ当然ですよね。
信じていない人の言葉はなかなか入ってきません。
『オオカミ少年』ではありませんが、たとえ自分が嘘つきでなくても、相手から信頼されていなかったり、疑いを持ったれていたりしたら…話を聞いているふりをして、伝わっていないということは当然起こります。
そしてその態度をみて、こちらは
「なんでちゃんと話を聞かないんだ!」
とイライラしてしまう。
前提に信頼関係がないと、こういうことが日常茶飯事に起こってきます。
2.子どもに関しては愛情不足になる。これはどういうことかというと、子どもは基本的には、生まれてから親を信じて生きていきます。
そうしないと生きていけませんから。
ですから、生まれてから当面はお母さんやお父さんが子どもに信頼を寄せている限り、信頼関係で結ばれていると言えます。
しかし成長するにつれて、親から怒鳴られたり、話しかけても無視されたり、目を見て話してくれなかったり、仮に話を聞いても親の気持ちばかりを優先していたりし続けると、子どもは自分の言うことや考えを親に伝えられなくなっていきます。
甘えよることができなくなってきます。
よく考えるとそうですよね。
いつも何をしても怒鳴られたら、自分の行動に自信がなくなる。自分も信じられなくなる。
話しかけても無視されたら、自分の言葉や考えに自信がなくなる。
目を見て話してくれなかったら、自分の存在自体に自信がなくなる。
親の気持ちばかりを優先されたら、自分の気持ちに自信がなくなる。
こうやって、どんどん自信がなくなり、自分が信じられなくなっていきます。
そして親から愛情を受けていないと感じてしまうのです。
親から十分に愛情を受けていないと感じると、この先、成長につれて様々な問題が生じてきます。
3.コミュニケーションが上手く築けなくなる。上記のことを続けていけば、うまくコミュニケーションが築けくなるのは時間の問題です。
親とのコミュニケーションが上手く取れないということは、のちのち、「歪み」として子どもの中に精神的に不安定なものを作り上げていきます。
信頼関係をどう作っていけばいいの?
ではその信頼関係はどうやって築いていけばいいのでしょうか?
まず信頼関係は『相手次第』ではなく、自分次第でいかようにも変えることができる、ということです。
その第一歩は、まずは自分が自分を信じて、相手を信じるということです。
でもこれって…分かっているけど、難しいことですよね。
だから、行動して変えていきましょう。
まずは自分から。
自分が相手を大切に思い、信頼する。ここがスタートです。
まず自分の心が固まったら、行動にうつしましょう。
ではどんな行動をとっていけばいいのでしょうか。
1.行動をよくみる、耳を傾ける
「
受け入れる」
というのは、よく言われる言葉ですよね。
逆に…それができれば苦労しないよ、といったところでしょう。
ではその「受け入れる」ことができるようになるには、まずはどうしたらいいのか。
子どもの行動をよくみてください。観察してください。これなら出来ると思います。
子ども達は、大人から見ると、いきなり突飛な行動をしたかのように大人は勘違いします。
しかし、多くの行動の裏には、様々な想いがあったり、その前に自分の考えがあって行動に移す場合も多いのです。
もちろん、そうでない場合もあるので、そこはよく見て見極めが大事ですが。
そして、よく話をきいてあげてください。
耳を傾けてあげてください。
どんな子も、自分の想いを、気づきを伝えたいのです。
話を聞くというのは、意外と難しいです。
聞き流し、であれば簡単ですが、きちんと話を聞いてあげるというは、目をみて理解しようとしてあげることだと思います。
もちろん、ずっと一日中、そうやって話をきいてあげたり、よく見てあげたりするのは大変です。
まして、たくさんの兄弟がいたり、働いていたり、学校だと全ての子どもの声を、一日中聞き続けるのは不可能です。
だからこそ、一日のうち、ほんの少しだけでもいいと思います。
この時間は子どもに向かう時間だと決めて、しっかり向き合う。
学校の先生だったら、休み時間に遊びながら、子ども達をしっかり見て、話をたくさん聞いてあげる。
まずは出来る範囲でやってみることをお勧めします。
2.とことん遊ぶ!
上記に近いかもしれません。
これが子どもと信頼関係を結ぶ、1番の方法といっても過言ではないと思っています。
とことん遊んであげてください。
むしろ、子どもよりも楽しむくらいに、子どもをのせて遊ぶことをおすすめします。
こどもの仕事は遊ぶことです。
私も子ども達とたくさん遊びました。
おそらく、学校にいる先生の中で一番、休み時間には本気で遊び、本気で楽しみました。
「よくそんな風に遊べるね。」
なんて同僚の先生に言われたことがありましたが、そんなことは気にせず、笑顔で
「はい!子どもたちが大好きなので、楽しくてしかたがないんです!」
なんて言って返していました。
子どもは一緒に遊んでくれる人が大好きです。
「今までの先生の中で一番、先生のことが好き!だって、先生、遊んでくれるんだもの。」
なんてこともよく言われました。
「今までの先生は、休み時間は職員室でお茶を飲んでたんだよ。遊んでくださいって言っても、忙しいからって断られちゃったの。だから先生が遊んでくれて嬉しい!」
と言う子もいました。
どんなに普段、授業を頑張っても、コメントをたくさん書いても、この『一緒に遊ぶ』ことに勝ることはないと思います。
だからこそ、そこで信頼関係が結ばれてくるのです。
でも…遊ぶのは休み時間だけにしてくださいね。
3.約束を守る
これは当然、だという人は多いのではないでしょうか?
しかし、実際にこの「約束を守る」ということが出来ていない先生のクラスは、学級崩壊を起こしていたり、子どもたちが先生を慕っていなかったり、信頼関係が出来ていなかったり、子ども達が落ち着かなかったりと、様々な問題の引き金になっています。
では子どもとの約束を守るとは具体的にどういったことなのでしょうか。
やりがちな例を出します。
①急に時間割を変更するこれ、意外とやってしまう先生がいるようです。
でも仕方がない時はありますよね。
外で体育をやろうとしたら、雨が降ってきた。でも体育館は空いていない。
急きょ、終わっていなかった国語の課題をやらせた。
なんて記憶はありませんか。
もちろん、いつもその通りに出来るわけではないし、人生何が起こるか分かりません。
しかも、これを「約束を守る」ことをしていない行為だと言われると、
「いやいや、ちょっと待ってよ。これ約束してたわけじゃないから、仕方のないことだよね。」
確かにそうです。
ですから、子ども達に「約束を破った」と思われないようにしておくことがいくつかあります。
それぞれの学校の環境が違うので、そこはご自身の学校の状態に合わせて考えてください。
たとえば、上記の例でいうと、子ども達は体育が大好きです。特に男の子は。
ですから、体育の授業がつぶれると、非難されまくります。
そうならないために、事前にすること。
それは
「時間割は、あくまでも学期ごとにいつ何をするのかを決めたものです。でも、その時になって、例えば体育が雨で出来なくなることがある。その時は、急きょ変更することもあるから、頭に入れておいてね。もちろん、そのかわりに別の日にやるから安心してね。」
と、事前に変更もあり得ることを伝えておく必要があります。
そして中には、急な変更に対応出来ない子もいます。その子のためにも、きちんと事前に対策をとっておくのは必須です。
②自分の言葉に責任を持つ「ちょっと待っててね。」
「後でやるからね。」
という何気ない一言。
これを言った本人は忘れてしまうのですが、言われた方はしっかりと覚えていて、最終的に「先生は嘘をついた!」といわれるパターンです。
子どもは多いクラスで30人以上。
5分の休憩時間や、朝の時間に子どもが一気に押し寄せてきて、色々言い出すこともあると思います。
質問や宿題のことで疑問があって聞きにきた子がいたけど、その時に先生自身で何か作業をしていて、ついつい「分かった。後でやっておくね。」と言って手を着けずに忘れてしまう。
これは意外と気をつけた方がいいです。
子育てをしていると、ついついやりがちなのですが、学校現場でも状況は同じです。
今忙しくて、出来ないとき。
その時はきちんと
「今、何をしていて、あと少しで終わるから、それが終わったらまた言いにきてくれる?」
と現状をきちんと伝えると、子どもは喜んで、
「はい!また少ししたら言いにきます!」
と言って、帰っていきます。
これで嘘つきにはなりません。
でもちゃんと、次にきてくれたら対応してください。
4.素直に正直でいるこれが意外と難しいのかもしれません。
つい相手が子どもだと思って、学校では、子ども達を子ども扱いをしてしまいがちです。
子どもなんだから、子ども扱いをして当たり前でしょう?
そうなんですが…
彼らは、子どもであり、
1人の人格を持った人間です。
そして私たち大人が思う以上に、
子ども達は子ども扱いをされることを嫌います。
1人ひとりの人格を持った人間として、真っ直ぐに、正直に、素直に向き合ってください。
例えば、割と出来ない人が多いのが、子どもに『謝れない人』です。
もちろん、子どもの前で謝ることがないことがいいのかもしれません。
でも、そこは人間です。
時には、間違ってしまうこともあります。
そんなときに、決してごまかさず、真っ正面から謝るべきだと、私は思います。
「子どもに謝ったら、教師としての威厳がなくなる。」
なんて言う人もいますが、それは違うのではないでしょうか。
学校生活を送る、幼児期~児童期に、1人の人間として扱われた子どもは、きっと大人になって子ども扱いされた子よりも、しっかりと自分の足で歩んでいける大人になるのではないのでしょうか。
教師も、
1人の人間として、自分の想いや夢を濁さずに正直に素直に伝えていく。
それがこれからの時代、さらに必要になってくる教師としての要素であると思います。
また、情報があふれ、人間関係が希薄になってきているこの世の中だからこそ、学校という場で、先生が子ども達1人ひとりと、うそや偽りなく、真摯に子どもと向き合っていくことが、これからの日本をもっと豊かに、精神的に成熟した国へと成長させていくのではないのでしょうか。
学校という場で、信頼とはどんな物なのかを学ぶことが出来たら…
それだけで、子どもにとって、学校はかけがえのない場所になるのだと、私は思います。
5.ほめる
褒めて褒めて褒めちぎる。
そのくらいの意識でいると、子どもを見る目も変わってきます。
また、何よりも人は褒められるのが大好きです。
これは大人も同じです。
でも、褒めるには相手のことをよく観察し、寄り添っていないと、相手が嬉しくなるようなほめ言葉はなかなか出てきません。
だからこそ、まずは自分の意識を変えて、相手をよくみるところから。
自分が子どものことを大切に思い、信頼する。
そしてたくさん褒めていって、信頼関係を築いていきましょう。
■ 執筆者情報meg【教師】
小学校教員の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。