「どうなって欲しいのか」を意図することから、信頼が生まれる
新年度、または学期のはじめに「理想の子ども像」といったことを皆さんは理想として掲げていると思います。
またご家庭でも、「こんな子になって欲しい」という想いを持たれているのではないでしょうか。
ただ、そういったことは漠然と思っていたり、または学校では提出するために形式的に済ませている方もいるのではないかと思います。
なぜそう思うのかというと、私自身がそうであったからです。
そこに注力する時間があるのなら、授業の準備や事務作業などやることが山ほどあったし、それを意図することは必要であっても、そこまでの時間をかけるものではないと思っていたし、「何となく理想をかかげていればいい」という程度でしかとらえていなかったからです。
ですが、実際は、このことに日々目を向け、意識を向けることが本当に大事なことだったのです。
なぜなら、そこを意識してから、学級が変わり、子ども達が変わり、自己信頼も、子ども達からの信頼も生まれてきたからです。
つまり、自分が理想とする型を先に作り、そこに少しずつ寄せていくといったイメージです。
いつ、どんな風に意図すればいいのか?
それでは、どのようにしていけばいいのかについて、お伝えしていきます。
まずやっていると思いますが、一年に一度、年度初めに「この一年で子ども達にどうなって欲しいのか」ということを書いて提出するついでに、そのことについて具体的に考えます。
そういう機会を、学期ごと、さらには一週間ごと、できたら一日ごと、さらにはその都度といった感じで、できるときに行います。
「そんな時間はない!」という声が聞こえてきそうですが、わざわざ紙や文章で書く必要はありません。
頭の中でほんの少し、そこに意識を向けるだけでも違います。
具体的な進め方については、下記に示します。
例えば、一年のはじめに「クラスの子がみんな仲がよくて、思いやりがあって、本音で語り合える関係性を作りたい。」
そういったことを理想とするとします。
もちろん、これを紙に書いて、毎日眺めるだけでも意識が向くので効果はあるかもしれません。
でもそれ以上に、その大きな理想のために、「ではこの一週間はどうなって欲しいのか」を考えます。
これは週報といったもので書かれている人もいるかと思います。
でも、それでもざっくりしすぎていたんです。
以前、そんな私に「雑すぎる!」と指摘をしてくれた同僚がいました。
つまり、もっと細かく意図していくことで、より効果があります。
細かい、とは時間軸のことです。
一週間の理想を考えたら、次は「今日一日、または明日一日でどうなって欲しいのか」を考えます。
さらに出来たら、その都度、つまり「この授業の終わりにはどんな風になっていてほしいのか」「掃除が終わったら、どんな風に帰ってきて欲しいのか」といったことを意図していきます。
一見、面倒に感じるかもしれませんが、目の前の子たちがどうなって欲しいのかを常に意図している状態を自分の中に作ることができます。
さらに、この意図をその都度考えていくことに加え、できたらそこに体感を加えます。
「こうなったら嬉しいな」というように、その時に感じるであろう感情を感じるようにします。
これは私自身も苦手な部分でしたが、この感情が加わることで、その意図したことが一気に加速してその通りになるようになっていきます。
よく考えてください。
「こんな風になったらいいな」と思いながら、そこに嬉しいといった感情ではなく、「どうせそんなことにならない」「この後のことを考えるだけで憂鬱になる」という気持ちがあると、どうしてもそちらの方に引っ張られてうまくいくことも、うまくいかなくなります。
それは自分の中で、意図していることと、感じていることがちぐはぐなので、一致しておらず、どこに向かっているのかわからない状態になってしまいます。
なので、意図に加え、感情をのせていくことが大事になります。
どうして意図することが信頼につながるのか?
ではこれがどうして信頼につながるのかというと、これは自己信頼につながります。
自分の中で「こうなって欲しい」ことが実際に起こっていけば、自分を信じられるようになっていくのは時間の問題です。
でも、反対に「こうなって欲しい」ことが起こらず、嫌なことや起こって欲しくないことが起こることがもちろんあります。
そうするとどんどん自己信頼が下がっていきます。
ではその場合はどうすればいいのかというと、そもそもの理想が高すぎるのです。
もちろん、理想は理想なのでどんなことを掲げることも自由です。
また、理想を望むことは大事なことです。
でも、現在地をしっかりと見極めることは絶対に必要になってきます。
そのうえで、その都度、意図をしていくのです。
そうすることで、起こってほしいことが起こるし、理想へと近づいてきます。
そして、何よりも、自分たちがよりよくなることを常に意図してくれている先生や大人のことを好きにならない子どもはいません。
それに、そんな風に未来の自分たちのために、想いを込めて時間を過ごしてくれている人が目の前にいたら、例え初めは心を閉ざしていたとしても、次第に信頼を寄せてくれるようになります。
もちろん、授業は大事だし、事務仕事などやることも山積みです。
本当に忙しいのは承知の上です。
でも、この意図するかしないか。
それだけで、少しずつ目の前の子ども達が変化してきたら、子ども達と繋がっている感覚を得られたら、それだけでも嬉しいと感じるのではないでしょうか。
頭の中のことなので、誰にもその頑張りは見えないかもしれません。
それでも、そんな風にスモールステップでも、少しずつでも、子どもたちのために必死で頑張っている先生たちが子ども達と信頼を構築していけるはずです。
最後に、これを伝えようと思ったきっかけは、私は教員時代、無意識につらいことをや悪いことを考えがちでした。
気づいたら、起こって欲しくないことや嫌なことを考えていたのです。
すると、その通りのことが起こるのです。
つまり、全ては自分次第なのです。
誰が悪いわけでもなく、もちろん自分が悪いわけでもありません。
その都度、起こって欲しいことを考える。
その都度、嬉しくなるようなことを先取りしておく。
すると、はじめはうまくいかなくとも、少しずつ、自分が信じられるようになってきます。
意図することが難しければ、最初は、自分がどんなことを思っているのかを観察してみてもよいかもしれません。
無意識に考えていること、感じていることが土台となり、今のあなたを作っていることがわかってくると思います。
■ 執筆者情報■森田恵
子どもが好きで教員を目指すが、挫折。退職を考えるも奮闘し、次第に毎日が楽しく、子ども達からも「先生大好き!」と言われるように。そんな教員時代の経験をもとに、悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。結婚を機に、渡米。10年の小学校教師の経験を活かし、渡米後は日本語の家庭教師や、現地校にて日本の文化を伝え、日本語を教えて過ごす。現在3児のママ。2度の流産経験により、食や環境、ママの状態が子どもへ与える影響などに興味を持つ。さらに、意識によってもたらされる変化を日々、体感を通して実践している。