はじめに
10月。子どもたちは学校生活に慣れ、
エネルギーが爆発する時期。
授業中に私語が止まらない、
課題をやらない、
反抗的な態度を見せる…。
そんなとき、教師の口から出るのは「いい加減にしなさい!」「何度言ったらわかるの!」
または、心の中で「何でうまくいかないんだろう。」「疲れてるなぁ。」「ちゃんとして欲しいのに。」といった言葉たち。
でも、叱ったあとに「言いすぎたかな」と胸がチクリと痛むこともあるはずです。
心で思った後に「あんなこと思うなんて。」と自己嫌悪におちいる人もいるかもしれません。
口に出さなくとも、
イライラが募ったり、
落ち込んだり、
気分が変えられずに、「機嫌の悪い先生」で過ごしたり。
そんな場面で有効なのが、「呼吸スイッチ」。
言葉を発する前に、
落ち込んだ時に、
呼吸を変えることで、
子どもへの伝わり方も、
関係性もガラッと変わります。
呼吸が変える「言葉の質」
怒りや焦りのとき、呼吸は浅く速くなり、
声は鋭く高くなります。
同じ「静かに」と言っても、子どもには「威圧」として届いてしまうのです。
一方で、ゆっくり息を吐いたあとに出す声は落ち着き、自然に低くなります。
同じ「静かに」でも、子どもには「安心」として響きます。
呼吸は、言葉のトーンを変える魔法の前奏。
呼吸ひとつで、指導が「叱責」から「伝達」に変わります。
実践例①:荒れている子どもへの対応
廊下を走り回る、授業中にふざける…。
頭ごなしに注意すると、火に油を注ぐことも。
•呼吸を深く一度吐く
•声を落ち着けて「どうした?」「何かあった?」と聞く
「叱る教員」ではなく「聞く教員」として接するだけで、子どもは態度を変えます。
「わかって欲しい」その声を受け入れるには、当たり前ですが、受け止める側である教員が落ち着いていないと無理です。
実践例②:学級全体のざわつきを抑える
授業中、クラスがざわざわ。
「静かに!」と何度も言うほど逆効果に…。
•黙って黒板の前に立つ
•教師自身が大きく深呼吸
•数人の子が真似し始めると、波紋のように教室に広がる
呼吸は「空気を変えるスイッチ」。
声を張り上げるよりずっと効果的です。
これは私がやって効果があったこと。
呼吸だけで?と半信半疑でしたが、効果抜群でした。
実践例③:泣いている子への寄り添い
トラブルで泣きじゃくる子。
すぐに「どうしたの?」と声をかけても、言葉は届きません。
•子どもの隣に座る
•一緒に呼吸を合わせて、ゆっくり吐く
•子どもが落ち着いてきてから、言葉をかける
呼吸は「言葉が届くまでの橋渡し」になります。
間(ま)が怖くて…。
そんな声も聞きますが、その間も呼吸に意識を向けてみてください。
その間が、その子にとって必要はこともあるのです。
実践例④:保護者対応・同僚とのやり取り
感情的な言葉をぶつけられたとき、すぐに反論したくなるのは自然なこと。
でもその一言が、後々大きなすれ違いになることもあります。
•相手の言葉を受け止める
•返す前にひと呼吸
•落ち着いた声で「承知しました」「少し整理させてください」と返す
呼吸が「言葉のクッション」となり、対立を防ぎます。
たった数回の呼吸が、あなたにも相手にも助けとなることがあります。
嘘だと思って、やってみてください。
呼吸と「待つ力」
教員にとって一番難しいのは「待つこと」。
でも呼吸を意識すると、不思議と余裕が生まれます。
•叱る前に呼吸一つ
•答えを待つ間に呼吸一つ
•言葉を選ぶ前に呼吸一つ
そのワンクッションが、子どもに「安心して話せる余白」を与え、信頼関係につながります。
呼吸トレーニングで日常を変える
「叱る前の呼吸」は、練習なしでは咄嗟に出ません。
だから日常の中で“呼吸を整える習慣”を積み重ねておくことが大切です。
•朝の会で全員で3回深呼吸
•授業前に教師自身が「呼吸リセット」
•放課後、職員室に戻ったら1分間の呼吸タイム
呼吸が日常化すれば、いざというときに自然と“呼吸スイッチ”が入ります。
おわりに
叱る前に、息を吐こう。
急ぐ前に、息を吸おう。
呼吸は、教師にとって人間関係を整える最もシンプルで強力なツールです。
この10月は、呼吸を「叱責を防ぐ魔法のスイッチ」として使ってみてください。
きっと、子どもも、保護者も、同僚も。
私自身、呼吸を本格的に取り入れ、実践してからは
面白いほどに変化し始めています。
ただ「呼吸に意味なんてない」とか
「そんなことで変わるはずがない」とか
「無駄でしょ」とか。
そんな風に思ってしまいがち。
でも、たったそれだけのことで
目の前の現実が、自分にとって心地よいものに変わっていくとしたら…
やってみたいと思いませんか?
もちろん、即効性がある時もあるし、
じっくりゆっくりじわじわと効いてくる時もあります。
でも呼吸は必ず、効いてくる。
子供たちと、あなたを繋いでくれます。
続けることで、
あなたの言葉に、安心して耳を傾けてくれるはずです。
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■ 執筆者情報■森田恵
子どもが好きで教員を目指すが、挫折。退職を考えるも奮闘し、次第に毎日が楽しく、子ども達からも「先生大好き!」と言われるように。そんな教員時代の経験をもとに、悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。結婚を機に、渡米。10年の小学校教師の経験を活かし、渡米後は日本語の家庭教師や、現地校にて日本の文化を伝え、日本語を教えて過ごす。現在3児のママ。2度の流産経験により、食や環境、ママの状態が子どもへ与える影響などに興味を持つ。さらに、意識によってもたらされる変化を日々、体感を通して実践している。