学校は現場から変わる|みらい塾 実践レポート【RCFリーダーシップ】|「わかっているのに変われない」のはなぜか――習慣の法則と3つの誤認

学校は現場から変わる|みらい塾 実践レポート【RCFリーダーシップ】|「わかっているのに変われない」のはなぜか――習慣の法則と3つの誤認

学校をよりよくするために、新しい取り組みを提案しても、教職員の理解を得られないことがあります。十分に説明したつもりでも意見が対立し、最終的には提案を押し通す形になってしまうこともあるでしょう。

2026年10月に行われた、みらい塾「RCFリーダーシップ」でも、学校経営計画の見直しを提案した参加者から、そうした経験が共有されました。

その参加者は、新しい方法の必要性を伝えたものの、反対する人との間に対立が生まれたと振り返ります。自分の判断は適切だったのか。相手の考えを十分に理解していたのか。そんな疑問を持ちながら、今回の講義に参加していました。

このような場面で、私たちは何を拠り所に判断しているのでしょうか。

今回の講義で扱ったのは、「習慣の法則」第1話――3つの誤認を解き、錯覚の習慣から確信の習慣へというテーマです。

行動を変えようとしても、なかなか変わらない。新しい知識を得ても、実践につながらない。その背景にある認識や自己内対話の習慣を、RCFメソッド®の視点から考えていきました。
 

みらい塾には、毎月3つの異なる学びの場があります

みらい塾では、学校改革に必要な力を一つの方法だけで学ぶのではありません。探究する力、現場を対話から見立てる力、リーダー自身を変革する力を、それぞれ異なる角度から育てています。

探究力養成|探究力養成トレーニング

専門書やテキストを読み、内容を要約し、そこから自ら問題を提起し、自分の学校現場と照らし合わせながら考察するトレーニングです。

目的:学校リーダー自身の探究力を鍛えること。

期待する効果:問いを立てる力、概念化する力、批判的に考える力、自分の考えを根拠とともに表現する力、他者との対話から考えを深める力を育てます。

ごきげん革命|現場ディスカッション

住田昌治塾長を中心に、参加者が実際に学校で直面している課題を持ち寄り、本音で対話する場です。

目的:目の前の出来事を、個人の問題だけではなく、リーダーシップ、マネジメント、ファシリテーション、関係性、職員室文化、学校組織という視点から捉え直すこと。

期待する効果:全国の学校リーダーの実践や視点に触れながら、自校の現在地を見立て、次に何を実践するかを考える力を養います。

RCFリーダーシップ|RCFリーダーシップアカデミー

RCFメソッド®を学校教育の現場へ翻訳し、学校リーダー自身と学校組織の変革について学ぶ場です。

目的:人を動かす方法を学ぶ前に、まずリーダー自身の自己理解、自己内対話、信頼、関係性、場の構造を見つめること。

期待する効果:自分起点で行動する力、人をより深く理解する力、人の力が発揮される関係性をつくる力、学校に変化が生まれる場を育てるリーダーシップを磨きます。

今回取り上げるのは、この3つのうち「RCFリーダーシップ」です。
 

1|リーダーが見ている現実と、教職員が見ている現実は同じではない

学校では、同じ会議に参加して同じ説明を聞いていても、受け取り方が異なることがあります。管理職が改革の必要性を説明しても、教職員にとっては不安や負担の増加として受け止められるかもしれません。

その違いは、単に理解力や意欲の差によって生まれるものではありません。それぞれが経験してきたこと、置かれている立場、担っている責任、持っている価値観などが、現実の捉え方に影響しています。

RCFでは、人間の成長を捉える重要な要素として、視座・信頼・覚悟・習慣という4つの成長軸を扱います。

視座は、物事をどの位置から捉えるかということです。目の前の出来事だけでなく、別の立場や学校全体の状況を踏まえて考えられるようになることは、リーダーにとって重要です。

信頼については、自分自身への信頼が他者との関係にも深く関わるというRCFの考え方が示されました。さらに、誰かのために責任を果たそうとする覚悟と、その人が日常的に繰り返している習慣が相互に関係していることも説明されました。

この4つを関連づけて見ることで、リーダーシップを単なる行動技術ではなく、リーダー自身の人間的成長として捉え直すことができます。

特に今回の講義で繰り返し扱われたのが、自分の解釈と実際に起きている事実を区別することでした。

「あの先生は改革に反対している」「この人は協力する気がない」と判断したとき、それは確認された事実なのでしょうか。それとも、自分の経験や価値観に基づく解釈なのでしょうか。

この区別が曖昧なままでは、問題解決のための判断も不正確になる可能性があります。
 

2|自己内対話を「開く」とはどういうことか

RCFでは、自分の内側で繰り返されている思考や感情のやり取りを「自己内対話」と呼びます。

私たちは日常の出来事に対して、無意識のうちに意味づけを行っています。相手の発言を好意的に捉えることもあれば、過去の経験と結びつけて否定的に受け止めることもあります。

問題は、その解釈を事実そのものだと思い込んでしまうことです。

今回の講義では、自己内対話を「クローズドシステム」と「オープンシステム」という二つの状態から説明しました。

クローズドシステムとは、自分の解釈だけで考え続け、同じ思考パターンを繰り返している状態です。

一方、オープンシステムとは、自分の解釈をいったん認識したうえで、外部の情報や他者の考えを確かめ、自分の認識を更新していく状態を指します。

ここで大切なのは、単に前向きに考えることではありません。また、自分の考えをすべて相手に話すことでもありません。

例えば、教職員との話し合いで意見が食い違った場合、相手の発言を自分なりに解釈して終わるのではなく、「このような意味で受け取りましたが、合っていますか」と確認することができます。

相手の説明を聞き、理解できなかった部分を問い直し、必要に応じて自分の考えを修正する。その過程によって、自分の解釈だけでは見えていなかった事実が明らかになることがあります。

これは、学校におけるファシリテーションや合意形成にもつながる考え方です。

講義の冒頭で学校経営計画の提案について話した参加者は、学びを進める中で、自分たちが相手に共感してもらうことばかり考え、相手の考えを十分に理解しようとしていなかったのではないかと振り返りました。

自分の意見を通すか、相手の意見に譲るかという二者択一から離れ、双方の認識を確認することに目を向け始めたのです。

自分の解釈に閉じこもらず、事実と他者の視点を取り入れて考える。その姿勢が、学校で対話を成立させるための土台になります。
 

3|行動の背後にある「習慣の構造」を知る

講義の後半では、「習慣の法則」の本題に入りました。

私たちは習慣という言葉から、早起き、運動、読書、整理整頓など、繰り返している行動を思い浮かべがちです。しかし、RCFが扱う習慣は、それだけではありません。

RCFでは、習慣を次の4層で捉えています。

第1層|行動習慣
実際の言動や日常的に繰り返している行動です。

第2層|マインドの習慣
行動の手前で繰り返されている、認識や自己内対話の習慣です。

第3層|潜在意識の習慣
過去の経験を通して形成されてきた信念体系や、快・不快の反応パターンです。RCFでは、この領域を「人生脚本」という概念で扱います。

第4層|絶対習慣
RCFが人間のより根源的な領域として位置づけているもので、愛や良心などと関係づけて説明されます。

これはRCFメソッド独自の習慣の捉え方です。

この構造から考えると、行動だけを変えようとしても、背後にある自己内対話や信念体系が変わらなければ、以前と同じ行動に戻ってしまう可能性があります。

例えば、「教職員にもっと仕事を任せよう」と決めた管理職が、実際には細かなことまで指示してしまう場合があります。

その背景には、「自分が確認しなければ失敗する」「任せるより自分でやった方が早い」といった考え方があるかもしれません。

こうした考えを持つこと自体が問題なのではありません。大切なのは、その考えがどこから生まれ、現在の行動にどう影響しているのかを知ることです。

RCFでは、単に新しい行動を増やすのではなく、すでに持っている習慣の質を高めることを重視しています。

そのためには、自分の認識と行動のつながりを理解する必要があります。
 

4|「3つの誤認」が、行動と可能性を制限している

今回の講義の中心テーマが、RCFの「3つの誤認」です。

ここでいう誤認とは、過去の経験や思い込みに基づく認識を、現在の事実と取り違えてしまうことを指します。

過去の誤認|過去の意味づけを、現在の事実だと思い込む

過去に経験した出来事を、当時の自分がどのように意味づけたか。その解釈が、その後の考え方や行動に影響することがあります。

例えば、以前に新しい取り組みを提案して強く反対された経験があると、次の提案でも「きっとまた反対される」と考えるかもしれません。

しかし、現在の職員構成や状況が以前と同じとは限りません。過去の経験は大切な情報ですが、それをそのまま現在の事実として扱わないことが重要です。

能力の誤認|「得意・苦手」を固定的な能力だと思い込む

「自分は人前で話すのが苦手」「あの先生はICTが得意」といった判断も、経験や印象に基づいている場合があります。

RCFでは、こうした得意・苦手の判断を固定的な能力の限界として捉えるのではなく、何を経験し、何を繰り返し、どのような技能を身につけてきたかに注目します。

現在の技能や習熟度に違いがあったとしても、それが将来にわたって変わらないとは限りません。

教職員や子どもたちを見る際にも、今できていることだけでその人の可能性を決めるのではなく、どのような経験や反復が必要なのかを考える視点につながります。

意志の誤認|自分には変えられないと思い込む

「環境がこうだから仕方がない」「周囲が変わらなければ、自分には何もできない」と考えてしまうことがあります。

もちろん、学校現場には個人の努力だけでは解決できない制度上・組織上の制約も存在します。

ただし、その中でも自分がどのように受け止め、何を選択し、どのような行動を積み重ねるかについては、見直せる部分があるかもしれません。

RCFが重視するのは、外側の問題をすべて自分の責任にすることではありません。現実の制約を把握したうえで、自分が関われる選択を見つけ直すことです。

3つの誤認は別々に存在するものではなく、互いに関係しています。過去の経験から自分の能力を決めつけ、その結果として「どうせ自分には変えられない」と考えることもあります。

過去の意味づけを見直し、現在の事実を確かめ、必要な行動を選び直す。その過程が、習慣の質を変えるための出発点になります。
 

5|2012年のマラソンで気づいた、自分自身の思考パターン

講義では、3つの誤認を理解するための具体的な体験として、2012年に挑戦したフルマラソンの経験も紹介しました。

当時、走り始めた段階では2kmを走るのが精いっぱいでしたが、38日後にフルマラソンを走ることを決め、練習を重ねました。

目標は5時間での完走でした。

本番では38km付近まで進んだものの、5時間のペースランナーに抜かれ、さらに40km手前では年配の女性ランナーにも抜かれていきました。

そのとき、頭の中に浮かんだのが「なぜ自分が負けなければならないのか」という思いでした。

しかし、その反応に気づいた瞬間、過去の競泳やボクシングで同じような思考パターンを繰り返していたことを思い出したといいます。

自分の想定どおりに進まない出来事が起きると、その出来事に強く反応し、目の前の状況を冷静に捉えられなくなる。その結果、本来の目的を見失ってしまうことがあったのです。

一方、事実として見ると、38日前には2kmしか走れなかったところから、38km以上走れるところまで到達していました。

目標の達成がその日でなかったとしても、取り組みを継続し、必要な力を身につけるという選択肢は残されています。

この体験を通して、結果そのものだけでなく、想定外の出来事に直面したとき、自分がどのように反応しているかが重要な学びになったと振り返りました。

学校改革でも、計画どおりに進まないことは珍しくありません。提案への反対、予想外の課題、教職員の意識の違いなどに直面したとき、そこで何を感じ、どう解釈し、次に何を選ぶのか。

その反応の仕方を見直すことが、同じ問題を繰り返さないための一つの手がかりになります。
 

6|経験を学びに変えるために必要な「事実確認」

今回の講義では、経験から学ぶための前提として、次の二つが示されました。

実際に何が起きたのかを正確に知ること。

その出来事をどのように意味づけているのかを確かめること。

学校で問題が発生したとき、状況を十分に確認しないまま対応策を決めてしまうと、原因とは異なる部分に働きかけることがあります。

また、同じ出来事であっても、当事者それぞれが異なる意味づけをしていることがあります。

そのため、関係者の話を丁寧に聞き、何が確認できている事実で、何が各自の解釈なのかを整理する必要があります。

今回の講義では、こうした事実確認の重要性を、学校の問題解決だけでなく、人間関係や自己理解にもつながるものとして扱いました。

また、学びを実践に結びつけるために、RCFが重視する「知る・する・振り返る」という循環も紹介されました。

新しい考え方を知る。

実際の学校現場で試してみる。

その結果を振り返り、事実と自分の解釈を見直す。

そして、必要な修正を加えて再び実践する。

知識を得るだけでは、日常の習慣は簡単には変わりません。経験と振り返りを繰り返すことで、学んだことが少しずつ自分の判断や行動に結びついていきます。

最後には、二人一組で問いを交わす「バディコーチング」の課題も提示されました。

自分が実現したいこと、そのために必要な習慣、取り組みへの障壁、そこで生まれる感情や思い込みを、対話によって明らかにしていくものです。

自分一人では気づきにくい認識も、他者から問いを受けることで見直すきっかけになります。
 

7|参加者が実感した「わからない」から始まる成長

今回の講義を受けた参加者からは、内容の難しさについて率直な感想が寄せられました。

一度聞いただけでは十分に理解できないことも多く、自分の経験とどのようにつながるのか、考え続けているという声がありました。

一方、過去にも同じ内容を学んでいた参加者からは、最初はほとんど理解できなかったことが、1年以上の実践を経て、少しずつ自分の経験と結びつくようになったという振り返りがありました。

その参加者は、日々の学校運営の中で「知る・する・振り返る」を繰り返してきたことが、自分自身の認識の変化につながっていると感じていました。

また、学校経営計画をめぐる対立について話していた参加者は、相手の立場を十分に理解していなかった可能性に気づき、今後の事実確認や対話の進め方を見直そうと考えていました。

いずれも個々の参加者による気づきですが、共通しているのは、学びを自分の経験と照らし合わせ、次の実践へつなげようとしていることです。

みらい塾が大切にしているのは、講義内容を覚えることだけではありません。学んだことを現場で試し、その経験を振り返りながら、自分自身の変化につなげていくことです。
 

学校を変えるために、自分の認識と習慣を見直す

学校改革には、制度や仕組みの見直し、教職員の協働、教育委員会との連携など、多くの要素が関わっています。

その一方で、日々の判断や対話を担っているのは、一人ひとりの人間です。

同じ出来事に対する解釈の違いが、対立や誤解につながることがあります。過去の経験に基づく思い込みが、新しい挑戦を妨げることもあります。

今回の「習慣の法則」では、そうした認識の働きを、RCFの3つの誤認と自己内対話の構造から考えました。

重要なのは、無理に前向きな考え方へ変えることではなく、現実を丁寧に確認し、自分の思い込みに気づき、必要な行動を選び直すことです。

学校リーダーが自分自身の判断や反応を見直すことで、教職員との対話のあり方も変わる可能性があります。

そして、その積み重ねは、異なる立場や価値観を持つ人が互いに理解し合い、それぞれの力を発揮できる学校づくりへとつながっていきます。

学校は現場から変わる。

その変化を支えるものの一つが、学校リーダー自身の継続的な学びと実践です。
 

次回募集開始は2027年2月

みらい塾では、全国の学校リーダーが探究、対話、現場実践、振り返りを重ねながら、自分たちの学校から改革を起こすための力を育てています。

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住田昌治塾長 プロフィール

住田昌治

学校法人湘南学園 学園長

横浜市の小学校校長を歴任し、ユネスコスクール、ESD、学校組織マネジメント、サーバントリーダーシップ、働き方改革などの分野で実践を重ねてきた学校リーダーです。

管理ではなく、任せるマネジメント。
対話的で能動的な学び。
子どもも教職員も元気になる学校づくり。

みらい塾では、校長自身の状態が学校全体に与える影響、子ども・教職員・保護者・地域が幸せになる学校文化づくりを伝えます。
 

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著者プロフィール

佐々木浩一
佐々木浩一(ささき こういち)


AI時代の人間教育家
RCFメソッド®創始者
NPO法人共育の杜 発起人・理事
学校リーダー育成「みらい塾」講師

順天堂大学大学院修士課程修了。競泳・ボクシング選手として競技に打ち込み、順天堂大学大学院時代には、スポーツチームにおける信頼やチーム力発揮のメカニズムを研究。

人が本来持っている創造性を発揮できる状態に導くRCFを通じて、学校リーダー自身の自己革新、信頼関係の構築、組織全体へのリーダーシップの波及を支援しています。

NPO法人共育の杜では、発起人・理事として、教育現場における人づくり、関係性づくり、リーダー育成に取り組んでいます。みらい塾では、学校改革を制度やスローガンで終わらせず、リーダー自身の自己内対話、関係性、行動、信頼の構造から変化を起こす学びを担当しています。



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