『まんがで知る 教師の学び』
~発達の最近接領域の理論と実践知・学問知~の学びを生かす
1. 手順の説明
以下において、『まんがで知る 教師の学び』第6章「発達の最近接領域の理論と実践知・学問知~専門家集団がビジョンを共有すれば…」の要約を行い、それについて批評します。
まず順を追って要約し、必要ならば補足します。
次に重要ポイントを1、2点絞ってピックアップし、それについて自分の視点からコメントし、批評します。
主張は論理的に行い、必要に応じて証拠をつけて説明し、最後に、全体を要約して結論づけ、まとめます。
2. 本章のまとめ
・協働※でしか達成できないような課題を与えれば、友達の考えややり方を模倣し、また力を合わせて解決するようになる。そして知的発達が促されてより多くのことが出来るようになる。
・「少人数による話し合い」という手法と捉えてしまうと、本質から外れる。
・共通のビジョンをもってともに工夫し合い、実践を通して省察※して得たものを「実践知」としてまとめていく。そして「発達の最近接領域」※のような理論である「学問知」と付き合わせることで教員全体の力量形成につながる。
3. 疑問に思うこと
本文から次の文をピックアップします。
「協働でしか解決できないような高い課題設定や既存の知識や技能を活用させる場の設定、子どもたちへの「学ぶ意欲」の持たせ方などが必要になってくるのです。」
上記の文を重要ポイントとし、下記に問題提起を示します。
「上記の文は、あくまでも理想の姿なのではないだろうか。
多くの学校で著者と同じような状況であればよいが、実際の学校内の研究の場でそのような話し合いが可能でない場合もある。
その時、各個人でできる事は何があるのだろうか。
また、そのように活発に研究がされている場合、何を意識して研究の場に臨めばよいのだろうか。」
4. 学びをどう生かすか
「協働でしか解決できないような高い課題設定や既存の知識や技能を活用させる場の設定、子どもたちへの「学ぶ意欲」の持たせ方などが必要」と著者は述べています。
しかし、簡単にできないことは明らかです。
また、仮にその手法を真似るだけでは本質から外れてしまいます。
だからこそ、研究という場は「教師が輝く豊かな学び合い」であるべきと主人公は述べています。
その校内研究についてこのように述べられています。
これまでは「参加意識が低い(受身的参加)」から、これからは「参加意識を高める工夫(主体的参加)」とあるように、全体的に校内研修への意識は現状として低く、「協働意識を高める条件作り」が必要。
(文部科学省「校内研修に関する中央教育審議会答申の考え方」より)
ここでの「協働意識を高める条件作り」のポイントとして、「Research(情報の収集・分析)」「Vision(展望)」「コーチング」をPDCAサイクル※に関連つけながら実施することで、協働意識を高めようとのねらいがあると述べられています。
これを基に考えると、できる事としては情報を十分に収集し、各個人で分析をし、それを提案事項として挙げます。
これは現状把握です。
また、できる限り教師全体でビジョンの共有をすることでゴールが見えてきます。
もしそれができないのであれば、個人個人でビジョンを持てばいいのです。
その現在地とゴールを結ぶために何が出来るかを考えるのが、校内研修で対話することです。
それをPDCAサイクルに沿って進めていきます。
(「コーチング」に関しては、研究主任の仕事でもあると私は考えているので、ここでは省きます。)
私がもし現役の頃にこの本を手に取っていたら、全く違ったアプローチが出来たはずです。
それは、私自身が校内研修に関しては完全に受身であり、そのやる意味を見出すことが出来ていなかったからです。
授業に立候補するも、その手法(教育技術)ばかりを追い求め、本質をみようという意識が全くありませんでした。
上記に書かれているように、ビジョンも言葉上の決め事であると思っていたし、イメージもせず、その必要があるとも思ってもいませんでした。
また「Reserch」に関しても、形式的な情報収集と分析に留まり、それ以上、求めることも調べようとする意識もなかったのです。
今一度、なぜ校内研修をするのか、またその研修がどのように教室で生かされるのかを全教員で対話してみると違う発見があるかもしれません。
5. まとめ
教師が学び合いの場に、楽しみや興味を見いだせない時、教室でも同じようなことが起こりがちです。
そして手法だけを学んでいるうちは、いつまでもその本質に触れることが出来ません。
教師も子ども達に行っていることと同様に、対話を繰り返し、ヴィジョンを共有し、よりよい研修の場を作れば、自身の力量を教員同士であげていくことができます。
【参照】
※協働
コラボレーション。パートナーシップ。複数の主体が、目的を共有し、ともに力を合わせて活動すること。
※ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」
今はまだできないけど、明日にはできるような機能。現在子どもが一人で解決出来る水準である「現下の発達水準」だけでなく、他人との協働のなかで問題を解く場合に到達する水準「明日の発達水準」を見るべきだと主張した。
※ 省察
振り返り。自分のことをかえりみて、考えをめぐらすこと。
※PDCAサイクル
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)
■ 執筆者情報
meg【元小学校教師】
小学校教員の経験をもとに、学校現場での悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。