「子どもとの信頼関係、どう築けばいいんだろう?」
そんなふうに思い悩む瞬間、ありませんか?
「もっとちゃんと関わらなきゃ」と思えば思うほど、
自分の声かけや態度に自信が持てなくなったり、
「私、ちゃんと信頼されているのかな」と不安になったり。
でも実は、信頼って、“特別なこと”をしないと育たないものではないんです。
むしろ、日々の中で無意識にしている“小さなこと”の積み重ねが、
いつの間にかしっかりとした信頼の土台を作っています。
6月も半ばに差し掛かる今の時期だからこそ、
初心を思い出して、
1番の基本に戻ってみてはどうでしょうか。
「信頼関係」と聞くと、子どもを感動させるような言葉をかけなきゃいけないとか、
印象に残る関わりをしなきゃいけないような気がしてしまうことがあります。
でも本当は、信頼は“積み重ねるもの”。
たとえば、水を毎日やる植物のように、目に見えないけれど確実に、
日々のふるまいの中で育っていくものです。
子どもは、先生のすべてをよく見ています。
毎日の声のトーン、まなざし、ちょっとした言葉づかい。
その「ちょっとしたこと」こそが、信頼の種になります。
「○○くん」「○○さん」と呼ぶとき、その声に、どんな気持ちが込められているか。
その“響き”は、子どもにとって大きなメッセージになります。
目を見て、ゆっくり、丁寧に名前を呼ぶ。
それだけで、「あなたはここにいていいんだよ」「大事に思ってるよ」という気持ちが、子どもの心に届いていきます。
名前を呼ぶことは、子どもを“ひとりの人間”として認める行為。
そこに、信頼の第一歩があります。
人数が多いと、丁寧に言葉を呼ぶという
当たり前のことがおざなりになりがち。
そんな中、そこをあえて意識してみることで
信頼が深まります。
私が勤務していた頃、
これを意識してやっていたことがありました。
名前を丁寧に、そこに想いを込めて呼ぶ。
たかがそれだけのこと。
でもその効果は絶大でした。
不安定な子が、少しずつ少しずつ
心を開いてくれている感覚を掴めるようになったのです。
最後には、驚くほどにクラスに溶け込んで
楽しそうにしている彼がいました。
「自分の名前」というものを大切に扱ってくれる人がいる。
その事実は何気ないことに感じるかもしれません。
でも丁寧に名前を呼ばれた相手にとっては、
思っている以上に安心感、居心地の良さを感じるのではないでしょうか。
子どもが「やってみたい」「こうしたい」
と何かを選ぼうとしたとき、
たとえそれが今すぐには叶えられないことでも、
まずはその気持ちを受け止めることが大切です。
つい「それは難しいからやめておこう」と返してしまいたくなる場面、ありますよね。
でも、それでは子どもは心の扉を閉じてしまうかもしれません。
そんなときこそ、
「そう思ったんだね」
「どうしてそう考えたの?」
と、一度その選択に寄り添ってみるだけで、
子どもは「この先生は自分をちゃんと見てくれている」と感じられます。
自分の思いや考えが否定されなかった体験は、
「この人には本音を言っても大丈夫なんだ」
という安心感と信頼を育てる大切な土台になります。
もちろん、こんな声も聞こえてきそうです。
「毎回そんなふうに全部の意見、聞いてられないよ。」
その気持ちもよくわかります。
現場は本当に忙しくて、時間との勝負です。
でもだからこそ、全部じゃなくていいのです。
たとえば、「今日は休み時間だけ意識してみよう」。
そんなふうに、自分の中で“意図”を持って関わる時間を作るだけでも、
変化は生まれます。
ただなんとなく時間を過ごすのではなく、
「子どもの選択を、一度受け止めてみよう」
と意識して向き合ってみる。
それだけで、子どもとの関係性にも、
自分自身の実感にも、
少しずつあたたかな変化が見えてくるはずです。
子どもが失敗したり、ルールを破ってしまったとき。
そんなとき、つい私たちは「叱らなきゃ」と思ってしまいます。
でも実は、その瞬間こそが、信頼を深める大きなチャンスなんです。
たとえば、
「どうしたの?」「何があったのかな?」
と、その行動の“背景”に目を向けてみる。
叱るよりも、その子の内側に寄り添う言葉をかける。
そうすることで、子どもは感じるのです。
「この先生は、自分のことを見捨てない人なんだ」と。
間違ったときほど、「一緒に考えよう」「そばにいるよ」と伝えること。
その姿勢が、信頼をじっくりと根っこから育てていきます。
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もちろん、怒りたくなる気持ちが湧いてくることもあります。
私自身、そんな場面でいつも葛藤していました。
「ここで怒った方がいいのかな?」
「どんな言葉をかけるのが正解なんだろう?」
そうやって考えていたのは、目の前の子どもたちのためというより、
「自分の対応を間違えたらどうしよう」という恐れだったのかもしれません。
でも、あるとき気づいたんです。
本当に必要だったのは、「怒る・怒らない」の正解ではなく、
子どもたちを信頼することだった、と。
子どもがその場で見せる姿だけを見て判断するのではなく、
その子の中にある「育つ力」や「変わろうとする力」を信じる。
そうして本気で、まっすぐに向き合うこと。
その姿勢こそが、
子どもたちにとっての“安心できる場所”をつくっていくのだと、今では思っています。
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これらの3つのこと、もしかしたらあなたはもう、すでに日々やっているかもしれません。
それなら、あなたはもう信頼のタネをまきはじめているということです。
教員としての力は、いつも劇的な関わりの中にあるわけではありません。
朝のあいさつ、机の横でのひと言、目を合わせるタイミング。
そのすべてが、子どもたちの中に
「この先生は信じられる人だ」という感覚を
少しずつ育てています。
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信頼は、“今”もあなたの中から生まれているものです。
大きなことをしなくてもいい。完璧じゃなくてもいい。
あなたの一言、まなざし、ふるまい。そのどれもが、信頼のタネをまいています。
子どもたちは、あなたをしっかり見て、感じています。
今日のその一歩が、1週間後、1ヶ月後、深い信頼へとつながっていくはずです。
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