冬休み、「整える」より「ほどく」時間を〜新年に軽やかに立つために〜
■「整える」ことに疲れていませんか?
12月。
年末という締めくくりの時期。
成績処理、職員会議、学年反省、行事準備……。
年末になると、どうしても私たちは“整える”方向にエネルギーを使いがちです。
「この1年を振り返って、何を反省しよう」
「来年こそ、もっと丁寧にやろう」
「計画を立てて、仕組みを見直そう」
そのどれもが大切。
でも、心のどこかでふと、こう感じていませんか?
「整えることに、少し疲れてしまった」
私も教員として現場にいた頃、
年末になると“来年のために”と動き続けていました。
けれど、本当に必要だったのは、
“何かを加えること”ではなく、
「いったん、ほどくこと」だったのだと今なら思います。
■「ほどく」とは、緩めて、思い出すこと
「ほどく」という言葉には、“忘れる”という軽やかさがあります。
がんばってきた自分を否定せずに、
ただ一度、その肩の力を抜く。
授業の質を上げるための学びも、
子どものために費やした時間も、
本当は全部、あなたの中にすでに息づいている。
だからこそ、
何かを“付け足す”よりも、
一度“取り除く”時間をもってほしいのです。
それは「頑張らない」という怠惰ではなく、
自分を信じて、静かに立ち戻る勇気。
呼吸を整えるように、心の緊張をほどいていく。
すると、自然に次の一歩が見えてくるのです。
■呼吸で「自分との信頼」を取り戻す
ここで少し、呼吸の話をします。
この数ヶ月、私は「呼吸を通して自分との信頼を育てる」ことをテーマにお伝えしてきました。
なぜなら、自分を信頼できるようになると、
子どもとの関係も、同僚や保護者との関係も、
どこか“楽になる”からです。
呼吸は、心の状態を映す鏡です。
焦っているとき、
怒っているとき、
責任を背負いすぎているとき。
呼吸はいつの間にか浅く、速くなります。
でも、深く息を吸って、静かに吐くとき、
身体の奥から「大丈夫」という声が聞こえてくる。
それは“思考”ではなく、“信頼”の感覚。
呼吸は、理屈を超えて、自分を信じ直す小さな儀式なのです。
■冬休みは「再生のための余白」
冬という季節は、自然界では休眠のとき。
木々は葉を落とし、土は静かに春の準備をしています。
人間も同じように、“動かない時間”の中で再生します。
教員の仕事は、いつも誰かのためにエネルギーを使う仕事。
だからこそ、冬休みくらいは「誰のためでもなく、自分のために」
何もしない時間を許してあげてください。
何も考えずに、好きな音楽を聴く。
子どもと一緒に寝転がって空を眺める。
ただ呼吸を感じながら、何も生産しない時間を味わう。
そんな瞬間にこそ、
心の奥底で「次の自分」が芽吹き始めています。
■「整える」ではなく、「ほどく」から始める新年
多くの人が、新年に「今年こそ、整えよう」と目標を立てます。
でも、整える前に“ほどく”時間をもつと、
その目標がずっと軽やかになります。
焦りや義務感で立てた目標は、続きません。
けれど、自分を信頼した状態から立てた目標は、
自然体のままでも実現していく。
つまり、
「何かを変える」前に「今の自分を許す」ことが、
本当の意味での“整え”なのだと思います。
■おわりに
前回の記事でお伝えしたように、
信頼は築くものではなく、思い出すもの。
そして、この冬は“思い出す”ための季節です。
息を整えながら、
「よくやってきたね」と自分に声をかける。
それだけで、心の奥が少し緩んで、
また誰かを信じる余裕が戻ってきます。
整えるより、ほどく。
努力より、呼吸。
そんな12月を過ごした先に、
きっと、軽やかでやさしい新年が待っているはずです。
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■ 執筆者情報■森田恵
子どもが好きで教員を目指すが、挫折。退職を考えるも奮闘し、次第に毎日が楽しく、子ども達からも「先生大好き!」と言われるように。そんな教員時代の経験をもとに、悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。結婚を機に、渡米。10年の小学校教師の経験を活かし、渡米後は日本語の家庭教師や、現地校にて日本の文化を伝え、日本語を教えて過ごす。現在3児のママ。2度の流産経験により、食や環境、ママの状態が子どもへ与える影響などに興味を持つ。さらに、意識によってもたらされる変化を日々、体感を通して実践している。