なぜ「呼吸」は、子どもを落ち着かせるのか

【更新日】 2026年1月6日(火) コミュニケション・外国語運用能

海外の子育て現場で見た、ごく当たり前の光景


先日、子どもの誕生日会に招かれました。
そこで、ひとりの子が転んで泣いてしまう場面がありました。

そのとき、そばにいた別のお母さんがしたことは、とても静かなものでした。

「大丈夫だよ」

そう言いながら、両手の指をすぼめて、ゆっくり広げる。
「吸って」「吐いて」
言葉はそれだけ。
肩に反対の手をそっと当てながら、同じ動きを繰り返していました。

声を荒げるわけでも、オロオロするわけでも、理由を聞くわけでもありません。
でも数十秒後、その子は落ち着き、また遊びに戻っていきました。

特別な支援でも、専門的な方法でもありません。
その場にいた他の大人たちも、誰も不思議そうにはしていませんでした。

そして、子供に対して大人がするこの光景は海外ではよくみられます。
特に小さな子は転んだり、ぶつかったり、小さな喧嘩は絶えません。

その都度、親や大人がそこに介入するというより、ただ呼吸を促してあげているのです。

「泣いたら、まず呼吸」
それが、生活の中に自然に根付いているように見えました。

呼吸は「落ち着かせる技術」ではない


日本でも、呼吸の大切さはよく語られます。
でもそれは、どこか「方法」や「テクニック」として扱われがちな気がします。

けれど、あの場面を見ていて感じたのは、
呼吸は子どもをコントロールするための手段ではない、ということでした。
もちろん、日本でもそのつもりはないかもしれません。

でも実際に私は、「子どもに泣き止んでほしい」「落ち着いてほしい」「理由を話してほしい」
そう思っていたことがありました。

それはコントロールとまではいかなくとも、自分が望む方に言ってほしいとどこかで思いながら対処していたのです。

そして、これらの経験を通して、呼吸を整えることで、まず落ち着いていたのは、
実は大人自身だったのではないかと思ったのです。

大人が自分の呼吸に戻る。
今ここにいる身体を感じる。
「この状況は安全だ」と、無意識に確認する。

その状態が、そのまま子どもに伝わっていく。

子どもは、言葉よりも、空気を読み取ります。
大人の緊張や焦り、不安を、とても敏感に感じ取っています。

子どもは「元に戻る」ことを知っている


子どもは、感情が激しく動く反面、立ち直りも早い存在です。

それは、未熟だからではありません。
むしろ、余計な思考が少なく、
「今の状態」に戻ることを身体が知っているからだと感じます。

悲しかったり、痛かったら泣く。
落ち着いたら、また遊ぶ。

大人のように、
「さっきのことを引きずる」
「こうあるべきだったと反省し続ける」
ということが、あまりありません。

だからこそ、大人が先に落ち着くと、
子どもは驚くほど早く、元の場所に戻っていきます。

学校で「呼吸」が使われにくい理由


では、日本の学校ではどうでしょうか。

忙しい。
時間がない。
周りの目がある。
「ちゃんと指導しなければ」という責任がある。

感情が荒れている子に対して、
まず言葉で分からせようとしてしまう。

でも実際には、
言葉が届かない状態だからこそ、荒れている
という場面も多いのではないでしょうか。

そんなときに、
「今は説明の時間ではない」
と大人が判断できるかどうか。

それが、呼吸を使えるかどうかの分かれ目だと思います。

実際に2026年になり、私の息子の学校でも
呼吸のクラスが始まるそうです。
これは、単発ではなく、
毎週、定期的に行うといいます。

思春期を迎える子どもたちにとって、
呼吸を整えることは
とても大切で、必要なものだから、だそうです。

教室でできる、ごくシンプルなこと


大げさなことは必要ありません。

・自分が一度、息を吐く
・手をすぼめて、広げる
・短い言葉で「一緒に吸おう」

それだけでも十分です。

大切なのは、
教員自身の呼吸が、先に落ち着いていること。

呼吸は、教えるものではなく、
一緒に戻るものなのだと思います。

おわりに


呼吸は、指導法ではありません。
評価されるものでもありません。

教員が、自分自身に戻るための行為です。

その姿が、
「ここは大丈夫な場所だよ」
というメッセージとして、子どもに伝わっていきます。


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■ 執筆者情報■森田恵
子どもが好きで教員を目指すが、挫折。退職を考えるも奮闘し、次第に毎日が楽しく、子ども達からも「先生大好き!」と言われるように。そんな教員時代の経験をもとに、悩みを持つ人に役立つことを伝える活動を行っている。結婚を機に、渡米。10年の小学校教師の経験を活かし、渡米後は日本語の家庭教師や、現地校にて日本の文化を伝え、日本語を教えて過ごす。現在3児のママ。2度の流産経験により、食や環境、ママの状態が子どもへ与える影響などに興味を持つ。さらに、意識によってもたらされる変化を日々、体感を通して実践している。