AI時代の人間教育 10回シリーズ|第2話

人間の可能性は、なぜ誰にも測れないのか
未発力という新しい人間観

前回、私は「AI時代だからこそ、人間とは何かを問い直す必要がある」とお伝えしました。

AIは未知のテクノロジーです。

しかし、本当に未知なのはAIだけなのでしょうか。

私はそうは思いません。

実は私たちは、AI以上に人間という存在を理解できていないのです。

学校ではテストで能力を測ります。

会社では評価制度があります。

スポーツでは記録があります。

社会は、人を「測ること」で成り立っています。

そして、その測定結果を見て、

  • この人は能力がある
  • この仕事に向いている
  • この子は優秀だ
  • 私は才能がない

そんな判断を当たり前のように繰り返しています。

しかし、本当に人間は測れるのでしょうか。
 

測れているのは「現在」だけ

ここで、一つ考えてみてください。

テストで測れるものは何でしょうか。

学力です。

スポーツテストで測れるものは何でしょうか。

現在の運動能力です。

会社の評価制度で測れるものは何でしょうか。

今、この瞬間に発揮されている成果です。

つまり、私たちが測っているのは、

現在発現している能力

だけなのです。

未来は測れていません。

ましてや、その人がまだ発現していない可能性など、誰にも測ることはできません。
 

私は「未発力」という言葉を使っています

私は30年間、人の成長を研究し続けてきました。

スポーツ。

教育。

経営。

地域づくり。

数え切れないほど多くの人と関わる中で、一つの確信があります。

人間には、まだ現れていない力がある。

私は、この力を

未発力

と呼んでいます。

未発力とは、

「まだ使えていない能力」

ではありません。

まだ存在そのものが現れていない力です。

本人にも分からない。

親にも分からない。

先生にも分からない。

専門家にも分からない。

だから「未発」なのです。
 

だから人間の可能性は測れない

もし、人間の可能性が最初から測れるのであれば、

  • 教育は必要ありません。
  • 挑戦も必要ありません。
  • 夢も必要ありません。
  • 未来も決まっています。

しかし現実は違います。

昨日までできなかった人が、ある日突然できるようになる。

人生の途中で使命に出会う人がいる。

誰も期待していなかった人が、社会を変える存在になる。

私たちは、こうした出来事を何度も目にします。

なぜでしょうか。

それは、

人間が未発力を持っているからです。

だから私は、

人間の可能性は、誰にも測れない。

そう考えています。
 

未発力は「探すもの」ではない

ここで、多くの人が誤解します。

未発力とは、自分の中に眠っている才能を探し出すことではありません。

「自分探し」という言葉がありますが、私は少し違うと考えています。

人間は、自分の中に完成した才能を持っていて、それを発見するのではありません。

未来を想像する。

挑戦する。

失敗する。

人と出会う。

ふりかえる。

また挑戦する。

そのプロセスの中で、それまで誰も知らなかった自分自身が現れてきます。

つまり、未発力とは、

未来を創造するプロセスの中で発現してくる力

なのです。
 

AIにも、まだ見えていない可能性がある

ここで、AIについて考えてみましょう。

AIもまた、未知の存在です。

私たちは、AIが今できることは知っています。

しかし、

  • どこまで進化するのか。
  • どのような可能性を持っているのか。
  • 人間とどのような関係を築いていくのか。

その答えは、まだ誰にも分かりません。

つまり、

人間にも未知がある。

AIにも未知がある。

私たちは今、

未知なる未発力を持つ人間と、未知なる未発力を持つAIが出会う時代

を生きています。
 

だから教育が変わる

AI時代になると、多くの知識はAIが支えてくれるようになります。

では、人間教育は必要なくなるのでしょうか。

私は逆だと思います。

これからの教育は、

知識を増やすことだけではありません。

その人の未発力が発現する環境をつくること。

それが教育の本質になります。

人を評価する教育から、

人の可能性を信じる教育へ。

答えを教える教育から、

未来を共に創造する教育へ。

私は、その転換点が今だと考えています。
 

AI時代だからこそ、人間を信じる

AIは、人間にはない力を持っています。

しかし、人間にもAIにはない力があります。

それは、

まだ誰にも見えていない未来を想像し、創造できること。

そして、その創造の中で、自分自身の未発力を発現させていけることです。

だから私は、

AI時代だからこそ、人間をもっと信じたいと思っています。

現在の能力ではなく、

まだ誰にも見えていない可能性を。

過去の実績ではなく、

未来に向かって発現していく力を。

それが、人間という存在の本質なのではないでしょうか。
 

次回予告

第3話
「人間は、未知だから創造できる」

人類は、なぜ文明を築くことができたのでしょうか。

そして、AIという未知と出会った今、私たちは何を創造しようとしているのでしょうか。

第3話では、「未知」と「創造」の関係から、人間という存在をさらに深く考えていきます。
 

著者プロフィール


佐々木浩一(ささき こういち)


AI時代の人間教育家
RCFメソッド®️創始者
NPO法人共育の杜 発起人・理事
学校リーダー育成「みらい塾」主宰
順天堂大学大学院修士課程修了。

競泳・ボクシング選手として競技に打ち込み、その後、人間の成長・能力発揮・リーダーシップ開発を探究。

現在は、RCFメソッド®️を通じて、自己理解・関係性・身体性・社会実装を統合した人間教育を展開している。

NPO法人共育の杜では、発起人・理事として、教育現場における人づくり・関係性づくり・リーダー育成に取り組む。学校リーダー育成「みらい塾」では主宰・講師を務め、管理職・教職員が自らのあり方を見つめ、学校現場において人が育つ場をつくるための学びを届けている。

新刊『アスリートマインド』では、大谷翔平、井上尚弥、イチローをはじめとする一流アスリートの思考構造を読み解き、子どもから大人までが学べる「結果を創る心の使い方」を解説。AI時代に必要なのは、知識や技術だけではなく、自分を整え、問いを持ち、困難を越えていく人間としての力である。スポーツの世界に凝縮された成長の原理を、教育・家庭・人生に活かす一冊。

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